2015年5月28日

実況ルポ:大学生、『転換力を磨く』にチャレンジ!

培ってきたものを、社会で活きる力として自己表現することをめざす

インタビューパートナーの力をかりて
自分の力の芽を探索中!
へ~、貯金するのが好きなんだ、
  ところで貯金のどんなところが好きなの?」
「う~ん、なんだろう。
  お金が貯まっていくのが嬉しいって言うか・・・」
「それって、どんな場面で嬉しいって感じるの?」
「通帳の桁が増えたのを見たとき!」
「あ、もしかして数字が並んでる書類とか見ること
  抵抗ないんだ?」
「そうかな・・、あぁ、そうかも。うん!」
 
あちらでもこちらでも、なにやらふたり組でのインタビューが進んでいます。
ここは埼玉県新座市にある十文字学園女子大学の教室。
前期講義「キャリアサポート」の4月の1コマ。

楽伝理事・柴山純と山本由紀子がお伺いし、自分ごととして体感しながら考える「キャリアデザイン・ワークショップ」の第2回目が進行中です。   

◆前期を通してのキャリアサポート講義のなかで2回にわたり伝版®を集中活用
「キャリアサポート」は2年生以上が自由に選択でき、10人の多様な経験をもつ社会人講師を招く10コマの講義と、その前後をはさむように開催され、社会人講師からの学びを自分ごとに引き寄せてキャリアを考えることを助ける4月と7月の「キャリアデザイン・ワークショップ」(計4コマ)と総括(1コマ)から構成されます。ワークショップでは、自分の気持ちや考えをひきだし、ひもとき、くみたてることを助けるグラフィックシート「伝版®」を5年前から導入しています。

◆自分の好きなモノ・コトから、能力の芽を見つけ出す転換ワーク
冒頭のインタビューは、4月のワークショップで最も盛り上がる『転換力ワーク(転換力を養うワーク)』の前半です。まずは伝版®「川のシート」を使い、「好きなことやモノ」「こだわりをもっていることやモノ」を洗い出します。次に、それらには自分の強み・長所がかくれているという信念のもと、“興味/関心をもつ対象”をシートから選び、用意された“引き出し質問”によるインタビューを通して、そこに隠れている自分が養ってきた能力の“芽”を洗い出します。 

あちらもガヤガヤ、こちらもガヤガヤ
ワークショップはにぎやか!
生活情報・人間発達心理・人間福祉・メディアコミュニケーションなど、日頃は交流する機会の少ない多様な学科の、
異学年(2~3年生)の学生たちがはじめまして!よろしくお願いします”のあいさつに始まり伝版®「種のシート」を使ってインタビューに取り組みます。インタビューを終えて手元に戻ってきたシートには「私の強み」につながりそうないくつもの“芽”が見え、自分のことのようでいて、自身が思うよりなんだか魅力的な「私」が表現されています。シートを眺めて恥ずかしそうな、でもうれしそうなみなさんのお顔に、ご一緒する先生も楽伝のファシリテータたちも
思わず笑顔に! 

さて『転換力ワーク』の後半では、いよいよ“芽”を強みに【転じ】て表現していきます。インタビューでひもとかれ、いわば“芽”の出た「種のシート」と、「思い入れのある
好きなこと」として“ネイル”をとりあげた《転換例》を
参考にしながら、一人ひとり、いろいろな角度から【転じる】に頭をひねり、伝版®「花のシート」に自分の強みを
書き込んでいきます。
中には比較的すんなりと、自分の好きなことを強みや長所に【転じ】ていく人もいますが、多くの
学生さんにとって初めは簡単な作業ではありません。楽伝のファシリテータたちは多様な事例を紹介したり、個別に声をかけて【転じ】かけている途中経過を承認し、応援していきます。 

4月のワークショップ終えた学生さんたちの声:
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‟今までの人生はそんなにたいしたことないと思っていたけれど、「川」を書き始めるとお宝が次々と出てきて、自分にはたくさん宝物(興味・能力・価値観)があったことに気づいた。”

‟最初はありきたりなことを書いていたが、考えているうちに他の人とは違う好きなことが浮かび、最後に書いた言葉は「私の強み」だと思えた。考え続けることは大切!続けていきたい。”

‟懐かしいこと、楽しいことだけでなく、辛かった時や悲しかった時も思い出した。だけど【転じ】てみたら、どれも「何かに立ち向かっていた」時だったと思った。”

‟「上手にできたときがうれしい」を「目的のために努力することができる」と置き換えたら、自分をPRできる気がした。もっと色々なことで考えてみようと思った。”

‟否定的に思っていたことも、見方をかえるとプラスになると思った(手を抜く→タイミングにより臨機応変に対応できる)。自分に自信がでてきた。”

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◆キャリア開発に必要なプロセスとは
楽伝では、学生及び社会人を対象とするキャリア開発支援の現場経験から「“興味/関心をもつ
対象”から、自分の能力を一般化する力」こそがキャリア開発過程に必須と考えています。 
 
たとえば大学生のキャリア教育においては、仕事観・職業意識の形成とキャリア選択に至るまでに、自分自身の興味/関心を自らひき出し、ひもとき、くみたてて理解し、その能力を自ら伸ばしていくための実践力を養うことが一つの目標となるでしょう。ところが、学生の多くは社会経験が限られ、キャリア開発の経験をもたないことから「能力=(イコール)学力」という発想に流れやすく、
その場合、学力に対して自己肯定感の低い学生は、自分の能力を見出す段階でつまずきがちです。 
日常生活の“体験”を通じて(実はすでに)培っている能力を“自らの資産(強み)”としてとらえる習慣のない学生に対しては、学生が身近に感じている“興味/関心の対象”に焦点をあて、その
対象との関係から離れ、別対象にもあてはまる一般化可能な「能力」として認識させる『転換力ワーク』をきっかけとし、「学力」に限らず、自分が興味/関心を抱く日常の対象の中に「能力」の
“芽”が潜んでいることに気づかせることがまず重要でしょう。

ヒントを提供する
“ネイル”などの《転換例》
従来のキャリア教育の過程で必ずしも積極的に提供されてこなかった気づきのきっかけとなる体感ワークが必要である― 楽伝の『転換力ワーク』はこうした問題認識から誕生しました。 

さて、キャリアデザインについて学び、『転換力ワーク』に取り組み「自分の内側」にアクセスした学生さんたちは、ただいま10人の社会人講師と次々と出会い「自分の外側」の情報にアクセスしているところです。楽伝ファシリテータたちが再び訪ねる7月、どのように成長されているでしょうか。7月のキャリアデザイン・ワークショップでは再び『転換力ワーク』に取り組む予定です。
本講義に伝版®を取り入れていただいて5年目を迎えますが、例年、7月の『転換力ワーク』ではみなさんの【転じる】スピードがぐっとアップし、内容も豊かになっています。今年度のみなさんがどのような成長を遂げられるか、楽伝も今から楽しみにしているところです。 

2度目の『転換力ワーク』に続いて、キャリアビジョンを描き、卒業までの行動計画を作成する7月のワークショップの模様は、後日こちらであらためてご紹介させていただきます。
 
楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します

2015年5月14日

ヒンディー語では「明日」と「昨日」は同じ言葉?!

“多様な文化で働く。「すでに持つもの」を転換する。”をお話しました

先日5月6日(水)楽伝の理事・山本由紀子が、山口県の放送局・KRY山口放送のラジオ番組  「おはようKRY」の「県人アワーふるさとdeつなごう」に登場しました。

このコーナーは、山口県出身でふるさとを離れて暮らし、活動している人を、番組パーソナリティが電話でインタビューをするもの。東京や大阪などの大都市だけでなく、海外で働いてみたいという若者が地方でも増えていることから、山口県出身でグローバル人材の育成に携わっている山本が、今回お話させていただくことになりました。
 
15分間のインタビューでは、山本自身がインドの多国籍・多文化な環境で働く中で体感した「多様性(ダイバーシティ)」について具体的にご紹介するとともに、多国籍・多文化を標準とするグローバルな時代に「転換力」を自分のものにすることにより、自らがすでにもつスキル・専門性を活かしてチャレンジを乗り越えていくことができるという考えを語りました。
 
インタビューの一部をご紹介しましょう。

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-海外勤務のご経験があるのですね?

はい、インドで通算4年働いてきたのですが、2014年まで働いていた会社は、インド現地の会社で、文化も違えば、国籍も違う多様な人々が働いていました。イギリス、トルコ、もちろん、インド人もいますし、コロンビア、ブラジルの人、そして日本人と、本当に多様な人たちと一緒でした。
 


ホーリーを祝う山本と同僚たち(2014.3)
Holi:ヒンディーの春祭り。春を祝い、
誰かれなく色粉を塗りあったり、色水を掛け合う。
-海外で働く上で壁になるのは言葉ですか?

やはり表面に現れることとしては、言葉になるのですが、それも、文化や宗教が違うと同じ言葉でも、イメージするものがまったく違うわけですね。
もっとも典型的な例ですが、インドのヒンディー語では「明日」と「昨日」は同じ言葉です。輪廻転生の思想のあらわれなのか、彼らはそういう時間感覚のDNAをもっている。「明日」といっても、「今日ではない」くらいの感覚だったりするわけです。そのなかで「『明日』って言ったでしょ?」と叱っても彼らには伝わらない。逆に「どうしてそう、シャカリキになるの」となるわけです。
ですから、彼らのコンテクストのなかで、  言い換えたり、質問を変えたりという工夫が難しかったですし、だからこそ、それだけエキサイティングなところでもありましたね。

-インド人と日本人、価値観の違いについて

もちろん、インドの方たちも日本人と同じでいろんな人がいるのですけれど、ほとんどのインド人はまじめですし、外国人には親切にしたいと思っている。ただ、その方向性が「日本人の価値観からすると」ずれている、あるいは楽天的すぎるだけなんです()。渋滞していてとても5分では到着しそうにないところを「5分で着く」と言ってしまう。あるいは、道を尋ねられて「わからない」というと悪いように思うらしく、親切にしたいからこそ、良かれと思って、あたかも知っているように言ってしまう。

-研修ではどういうことをクライアントさんに伝えておられるのでしょうか?

海外にいくと、言葉も違えば、いろんな文化や宗教の違いもあり、確かに大変ですが、でも逆に日本のなかでも、一人ひとりみんな「違う」という状況は同じなんですね。
たとえば、「目の前に青い海が広がっています」といっても、どんな海を想像しているかは一人ひとり違う。砂浜を思い浮かべる人もいれば、岩場を想像する人もいる。
そう考えると、日本での経験をほんの少し応用する、アレンジすることで、海外でも通用することがあるし、同様に、職業上の経験だけでなく、どんな経験も応用することができる。これを私たちは「転換力」と呼んでいますが、この「転換」をすることができれば、グローバルな時代、あるいは変化の激しい時代もそれを乗り越える力がみんな自分のなかに備わっているよ、ということをコアのメッセージとしてお伝えしたいと取り組んでいます。

*このインタビュー放送は、ポッドキャストで聴くことができます。
    http://kry.co.jp/radio/hotzone/podcast.html

   ・ポッドキャスト:音声データファイルをダウンロードしていつ・どこでもラジオ番組が楽しめるサービス。
          iTunesをダウンロードし、「ポッドキャストで聴く」ボタンをクリックして利用できます。

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楽伝では、「変化に対応する人材の持つべき態度・行動」として【6C:Curiosity(好奇心)、Concern(関心)、Control(コントロール)、Confidence(自信)という4つの態度とCooperation(協働)、Conversion(転換)という2つの行動】のセットを提唱しており、中でも変化に対応する直接的な行動として「転換(Conversion)」する力をクローズアップしています。

ひとつの会社組織で働き続ける場合においても「変化への対応」はもはや日常になりつつありますが、海外の赴任先で働く場合や、外国籍の社員と働く状況では「今までと著しく違う」ことがいっそう多くなります。自らの想定を大きく超える「違い」に面したとき、これまで培ってきたスキルや専門性が通用しないのではないか、ゼロから始めるのか、といった不安がふと生じることもあるでしょう。もちろん、これまでの「そのまま」では通用しないかもしれませんが、「組み合わせ」たり、「とらえなおして置き換え」たり、さまざまな応用やアレンジをすることで、すべての経験が新しい環境でも通用するキャリアとなります。

また社会人だけでなく、職業経験のない学生が、経験から培ったものを企業組織で通用する力として自己表現できるようになる上でも、「転換」する力が大変有用です。

これらは、私たち楽伝が【6つのC】のなかでも「Conversion(転換)」する力をクローズアップしている所以でもあります。

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

 

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