2016年2月17日

開催報告「中堅女性のための実践キャリア研修(12月7~9日)」

『変化の時代のキャリアデザイン』を体感するワークショップ&個別面談

冬のある朝10時、東京・渋谷。公益財団法人日本生産性本部の研修ルームです。
福島、富山、東京、愛知、広島・・・
各地から集ったのは、食品・化学・IT・医療・重工業・流通・不動産など、異業種10社で働く18名の女性たち。ライフステージやキャリアの変遷・専門性もさまざまな皆さんと、楽伝理事・柴山純がファシリテータとしてご一緒する「中堅女性のための実践キャリア研修」が始まりました。

◆「個人」も変わりゆく
初開催から4年。本研修の模様も、この間の時代の変化を映し、年々変容してきました。
たとえば当初は、育児休業や転職・再就職の経験をもつご参加者はごく少数でした。「初めての異動を控えています」「ライフイベントを考え始めている」「仕事に専念して充実感あるが先のことは漠然としている」「行ってこいと人事にいわれました」など、よくおききしました。

今はどうでしょう?
育児休業からの復帰、転職や再就職、遠隔の上司や在宅ワーク者との協働など、多様な働き方を多くの方が経験済み。時短、職種転換、転勤、希望しての専門性の垣根を越えた異動、契約形態や配置転換への呼応など、キャリア継続のために柔軟な働き方を、自ら働きかけて実現している方々も。研修への参加経緯も、自分から多くの選択肢を吟味して選び、上司・人事部等の承認をとりつけて申し込んだという方が増えつつあります。

先日2月10日に公表された「第7回コア人材としての女性社員育成に関する調査(注)」の結果概要によれば、企業の《女性活躍推進の取り組みで進展しているもの(3年前と比較)》の上位2番目として「出産・育児明けに就業する女性社員が増えること」が挙がりました。《女性社員の行動に変化が表れているもの(3年前と比較)》としての上位回答は、「仕事のレベルが上がったり、仕事の範囲が広がった女性が増えた」「自分のキャリアアップのため、社内外の研修等への参加が増えた」「責任の重い仕事・リスクのある仕事を受け入れる女性が増えた」と続きます。また、《女性社員の意識を高めるための取り組み》として「チャレンジャブルな仕事機会を与えている」「仕事の幅を広げるような異動や転勤等の機会を与えている」とした企業は4割を超えました。
(注)「コア人材としての女性社員育成に関する調査」:公益財団法人日本生産性本部が2009年から毎年実施。第7回は上場・非上場企業587社が回答。
「女性社員の意識」はなお「管理職の理解・関心」などとともに引き続き課題とされるものながら、この「中堅女性のための実践キャリア研修」での4年間を通じては、キャリアを自ら拓く時代にふさわしく、個人の意欲と組織の働きかけがかみあって、キャリアと向き合う「態度」と「行動」が磨かれつつある場がたしかに増えていることを感じます。

◆まずは『好奇心』を駆動!
本プログラムは、『伝版®(参照:ワード解説)』を活用した「1Dayワークショップ」+「個別相談」の構成です。
ワークショップは、プログラムが変化に応じ、場に応じ、徹底カスタマイズされる楽伝ならではのキャリアデザインプログラム。「従来のキャリア観」とは別の視点を要する「これから=変化の激しい時代」にキャリアを拓く上で大切な要素を、その現場に応じたキーワードでハイライトします。

今回取り上げたキーワードの1つは『好奇心』。楽伝が「変化に対応する人財の持つべき態度行動」として提唱する【6C:①Curiosity(好奇心)、②Concern(関心)、③Control(コントロール)、④Confidence(自信)という4つの態度と、Cooperation(協働)、⑥Conversion(転換)という2つの行動のセット】の筆頭に挙げる要素です。『好奇心』のもつパワーを理解し、自らのそれを自覚して内なる資源とする、そうしたワークから今回はスタートしました。
 
◆実践、キャリアデザイン
ワークショップでは、所属組織・専門・キャリアの長さなど、あえてシャッフルした多様なメンバーからなるグループで、一日コミュニケーションを深め、自分と異なる視点・価値観を体感しながら、自分ならではのキャリア観(働き続けることへの内発的動機)を再発見いただきました。ライフとワークを積極的に統合してキャリアデザインを実践してみる工程では、《思考・整理・伝達のコミュニケーション力》をむりなく引き出すグラフィックシート『伝版®』を使い、自他(自分自身と自分をとりまく環境)の探索と、グループメンバーとの刺激交換を重ねます。
 
この公開講座ならではの魅力ですが、参加メンバーが内包する多様性がたいへん大きいことから学びの質が高まります。面識のない《他人》であるご参加者同士ですが、楽伝ファシリテータの水先案内により、互いの「多様性」へ安全に触れ、時に感動するうちに尊重の想いを高め、助けあうチームへとなっていきます。グループ交流を重ねるなかで、メンバーの多様な知識・経験・考え方に基づいて提供されるヒントが、一人ひとりの「明日からの行動」のための決意とプランニングに役立ちます。ご参加者自身が《主役》となり、キャリア形成への「意欲」を醸成しながら、現在地から次の地点へと「行動」をおこすことを促進する場、それが「1Dayワークショップ」です。

◆「アクション」を確かなものに
さて、ワークショプ後にはおひとり30分間の「個別相談」です。
「あなたの時間ですよ~」とのファシリテータの声掛けで始まるとおり、主役は参加者ご自身!
研修をその日限りにとどめず、明日からの「アクション」を確かなものにすべく、各自トピックを提示いただいてのキャリアカウンセリングとなりました。
 
とえば、ワークショップでの疑問を解決する、ファシリテータから情報収集してプランを具体化する、対処法が見つからなかった課題を検討する、ワークショップでは話しづらかった問題を相談する、社外リソースについて情報収集するなど、どれも歓迎です。
最近は「今回学んで気づいたことを他の社員や経営層、人事等に共有し、変化をおこしていきたい!」という決意宣言とともにのご相談も増えています。数週間後に、行動計画を実行しての手ごたえや、ネットワーク立ち上げをめざして働きかけを始めたという経過報告など、うれしいお知らせをいただくこともあります。”  --- by 楽伝理事・柴山

◇◆◇ これまでのご参加者の声 ◆◇
「書き出し、発言し、今後3年間でどんな役割を果たしたいか、実は自分に想いがあったと気づきびっくりしました」

「先のことを考えることが楽しい作業だと、初めて思いました。皆さんとの交流と、伝版で楽しくワークを重ねるうちに、モチベーションがわいてきました」

「皆さんに承認いただいて、短所だと思っていた側面をとらえなおすことができました。これからは課題克服にチャレンジするための、むしろ強みとして活かします」

「身近にロールモデルがなく、異業種、異年代で職責・環境の異なる皆さんとの交流が宝のような経験!共感と発見がいっぱいでした」

「職責がらキャリアデザインは経験済みですが、今回取り組んで、まだ具体化できていなかったと自覚しました」

「自分が今日感じたようなモチベーションを、後輩女性社員たちが感じる機会をつくりたいです。まずは上司にレポートとともにしっかり報告し、後輩たちに共有する機会を実現します」

「毎日目の前の業務で必死でしたが、弊社で女性社員がもっと活躍できるよう、前の会社での経験も活かして私が働きかけられることがある、と今日一日でいくつも書き出しました」
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◆◇ ◆◇

◆2016年度に向けて
本研修の場でご参加者が取り組まれたように、たとえば「ライフとワークを従来以上に積極統合し、個人の内発的動機をひきだす」ものへ、そして「多様性に学び、柔軟に軌道修正して行動できるしなやかな自分を養う」ものへ、と。『キャリアデザイン』のめざすあり様は、変化の時代にあっての必然として、変わってきました。《個人=人財》がこの時代に自らの力を発揮しキャリアを拓く上で必須となる『キャリアデザイン力=自分のキャリアをプロデュースする力』を標準装備することにより、個々人のかけがえのない人生を輝かせることのできる未来の実現に向け、楽伝は2016年度もさまざまな社会教育の現場で活動してまいります。

2016年度ダイバーシティ・マネージメント・カレッジ 『中堅女性社員のための実践キャリア研修』(主催:公益財団法人日本生産性本部)は11月に開催予定です。新年度を迎えましたら、当ブログでもあらためて日程などご案内してまいります。
なお、本研修企画は、《思考・整理・伝達のコミュニケーション力》を育むグラフィックシート『伝版®』を活用したプログラムを、キャリアデザイン・ワークショップを通じて体感いただける「公開講座」でもあります。『伝版®』を活用したプログラムにご関心がおありの方は、ぜひこの機会をご活用ください。
【ご参考】2015年度の本研修(開催済み)概要はコチラ

*ワード解説:『伝版®
『伝版®』とは「伝えるための版」を表す造語で、楽(ラク)に
楽しく、気持ちや考えをひきだし、ひもとき、くみたてることができる「コミュニケーションの型紙」を意味します。商品開発、人財開発、ビジネス構築をはじめ、多様な目的のセミナーや会議等のテーマに沿って、カスタマイズされたプログラムの中でツールとして提供され、自然をモチーフにしたユニバーサルなグラフィックが《思考・整理・伝達》を促進してくれます。
『伝版®は、その価値を営利企業のみならず社会教育と地域振興の領域においても積極利用できるよう、NPO法人である楽伝に、
開発者である株式会社伝耕から貸与されております。
楽伝と伝耕の双方を通じたプログラム開発と実践により、『伝版®はのべ3,000人(2015年12月末時点)を超える皆さまに利用いただきました。

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

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