2017年10月12日

【後編】変化の時代を生きる若者のキャリア構築力を育む

高校生のためのキャリア構築支援ワークショップ(福島県白河市)

伝版®に表現したヴィジョンを語ってみる
『高校生の頃にしてほしかったキャリア教育って何?』-興味深いタイトルのリーフレットが今春発行されました(文部科学省 国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター 初版発行 平成293月)
その1年前には、このリーフレットの制作過程でも参照された、キャリア教育に関わる複数の調査結果を二次分析して知見を見出した報告書(*)も発表されています。
*国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター「再分析から見えるキャリア教育の可能性―将来のリスク対応や学習意欲,インターンシップ等を例として」(平成28年) 

資料では“高校時代には指導がなかったが、あの頃にもっと学んでおきたかった”キャリア教育上の項目として、“将来起こり得る人生上の諸リスクへの対応について”・‟初めての就職の先に想定される“転職・再就職などの就職支援の仕組みについて”の2つが挙がっています。

就労継続や生活基盤に関わる問題に直面したときに独りで抱えこんでいる若者が少なくない現状をふまえ、リスクに対応するための公的相談窓口の情報等に触れる学びの重要性が指摘されています。
また、“支援を得るという選択肢”を若者が自分のものにするために、“直面しうる将来の変化を一定想起し、支援を得ることも含めて「他者と協働」する構えを養う”試行的実践となる学習体験が必要であることを我々は学びとりました。

時代が急速に変化している以上、“未来ある人生=キャリア”の構築に関わる人間には、常に「今を生きる若い人たちの視点を身に着ける」ことが欠かせません。前記の資料は示唆に富み、それを大いに助けるものでした。我々自身これら資料に新たな視点の学びを得て今回のキャリア構築支援ワークショップのプログラム開発と実践に反映することで、現在高校生である参加者によりよい学習体験を提供できたと感じています。

さて、高校生びいきの公共施設 コミュニティ・カフェEMANON(エマノン)で開催された楽伝主催「高校生のためのキャリア構築支援ワークショップ」。前号に引き続き、後半の模様をご紹介します。  

1では自分が生きていく70年、80年先の近未来を、人口動態をベースにマクロレベルでどのような変化が社会に起きうるかイメージし、将来を考える上での自分の“考えの枠(わく)”をシフトすることに取り組んだ高校生のみなさん。地元地域・白河市を題材にしたケーススタディも終えたところで、第2部スタート!今度は自分自身に目を向けていきます。
 
◆第2部:キャリアプランの方法論とその活用法を知る・試す
キャリア構築の方法論について基礎知識を得たのち、第1部の体験を通して広げた自分なりの視野、動いた自分なりの視点をもって、「花」の伝版®の上に自分の宝となる好奇心や強み、つながりを載せ、みつめなおします。そのとらえなおしをする過程で感じた思いを大事に、今度は「木」の伝版®をつかって「2~5年後の自分のありよう」を見える化。おひとりずつ自分の考えをプレゼンテーションしていただきました。

自分をとらえなおす
「私は・・・」「僕は・・・」と語りはじめた
6人のヴィジョンには、希望する専門領域、
職業、自分が望ましいと思う ‟人とのつながり方” や ‟コミュニケーションのありよう”、社会において興味ある役割、地元地域との関わり方など、それぞれの方が好奇心を寄せる対象と深く関わる多様な要素が盛り込まれていました。
また、なにをきっかけにどのような問題意識をもつに至ったのか、どう実現したいのか、何がまだわからないのかなどなど ーその人ならではの、過去・現在地・未来がつながるストーリーあるプレゼンテーションであることも共通していました。
 
ところで遡って6月。
企画をつめるなかで、EMANON準備室・室長の青砥さんと楽伝メンバーはこんな話をしていました。
  「白河だから、●●だから・・・といった他者や自分自身の先入観に影響されずに、主体性をもって
 自分の道、キャリアを選んでいってほしいです。」
  「そのための姿勢と具体的な方法を、みなさんが自分のものにできるといいですね。」

ワークショップを終え、みなさんはどのような感想をもたれたでしょう。

  • 数字で予測してみると、これから先の時代は衝撃情報いっぱいだった!未来は見えないからこそ、自分がそこに興味を広げてみようとしていくことが大事だと感じた。
  • いままで無意識だったけれど、無意識にでも、自分は“なにかを想い、行動している”んだと自覚した。
  • 時代は移っていくから、自分が大人になった時に、自分の経験値だけでなく「時代にあったものの見方」をもって、関わったり評価したりしていかなければと感じた。そのためにも、まずはいまの自分を知る自己分析も必要だなと思った。
  • 人と話すのが好きだという自分を発見した。書いてみて自分のこと、案外としらなかったなと思った。自分の将来したいことを、表現できるようになった。
  • 1年生のときからEMANONに出入りしていて、広い視野を持った人やいろいろなことをやっている人に自分は出会ってきた。今日参加して、ここでいろいろな体験をしたことで自分の視野が広がってきていたことをすごく実感した。これまでの自分の経験を整理でき、自分にとってどんな意味があったか自覚する機会になった。
  • 将来することと、したいことのとっかかりが見えた。自分のことをあんまりしらなかった。書き出してみるのって大事だと思った。

全員のプレゼンテーションを聴きおえた青砥さんにも発言いただきました。

「みんなが、“自分が●●する!” と主語を自分にして、具体的なこうする・こうしたい というものを発表していたことにとても勇気づけられました。何が起こるかわからない時代だからこそ、偶然の出会いと好奇心が人生を広げる。好奇心に応じてカラダを動かしていくことにPositiveになることが、これからの人生を豊かにしていく、ということを今日、みんなが共有できたのではないかと思います。」

ワークショップから約1カ月が過ぎ、
当日ファシリテータを務めた楽伝の理事、
山本由紀子はいいます。

「今回参加されたみなさんは日ごろから
EMANONを利用されてきたそうです。6人の方の“体験の棚卸し”を拝見していると、ここが複眼・多眼的視点を養う多様な機会を提供しているコミュニティであることを実感しました。

前出の報告書にもあるとおり、高校卒業後に生きていく上でリスクに直面したときに相談できる公的機関の存在を、高校生のうちに知っておくことはこれからの時代、ますます大切でしょう。
 
その点、EMANONとつながってきた彼・彼女たちは、「高校卒業後のキャリアを考える」という人生上の課題に直面したとき、白河市にあって市内外・国内外の様々な支援リソースにつながりうるこの公共施設で“支援を得る”体験をすでに重ねてきています。6人のみなさんが卒業後、何か人生上の課題やリスクに遭遇したときには、どのような場所や環境に居ても、自ら他者の支援を得るべく行動をとられるだろうと容易に想像できます。

白河市の公共施設としてEMANON準備室が運営するこの場所は、まさに一段高い視点をもって、高校生の未来に向けて大切な資産となる“力”を育む役割を果たしておられます。幸いにも『EMANONをもつ白河』の高校から、今後も多くの新3年生、2年生、1年生たちがココを訪れてつながること、同時に、来春高校を卒業する皆さんがまたちがった風を折々にEMANONにもたらすことを祈念しています!」
 
◆生き抜く力を育むために
楽伝が今回の企画で重視したのは、変化に対応する資質、レディネスを高めること。
我々は変化に対応する人材の持つべき態度・行動として《6C*を提唱していますが、今回はその中の一つである『転換』する力に焦点をあて、“考え方の枠(わく)をシフトする”ことを軸としたプログラムを実施しました。
*6Cとは?変化に対応する人材の持つべき態度・行動として、NPO法人楽伝と株式会社伝耕が提唱する6つの要素。Curiosity(好奇心)、Concern(関心)、Control(コントロール)、Confidence(自信)という4つの態度と、Cooperation(協働)、Conversion(転換)という2つの行動のセットからなる。なかでも、変化に対応する直接的な行動につながるものとして『転換(Conversion)』する力を重視している。

◆ご参考:『転換する力』
楽伝は、6Cの一つ『転換』について、キャリアチェンジャー(複数回の転職経験者)の転換力に着目し、株式会社伝耕と協働で研究を進めております。
>>研究発表@第31回国際心理学会議&日本心理学会第80回大会  

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。



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