2018年1月18日

チームリーダーとしての役割をまなぶ

東京都生活協同組合連合会主催 マネジメント研修にて 

3回を終えて
先月中旬、各1カ月をはさんで3回にわたり実施されたシリーズ研修が終了しました。昨年度のブログでもご紹介した東京都生活協同組合連合会様(以下、東京都生協連)主催の介護事業所のリーダーの方々を対象とするマネジメント研修です。
らくでんは昨年度に引き続き、研修の水先案内人となるファシリテータを派遣致しました。今年度は都内で活動する医療生協、地域生協など、様々な生協から10名の方が参加されました。 
 
*生活協同組合: 組合員のくらしの改善・向上の実現に向けて、地域・職域・大学・医療・共済・住宅など多様な領域で事業と活動を展開。介護事業所を通じたサービスの提供もそのひとつで、生協組合員と地域住民が利用している。

◆社会構造の変化に対面して
10年前に65 歳以上高齢者人口の総人口に占める割合(高齢化率)が21%に達し、超高齢社会になった日本。総人口は長期の減少過程で生産年齢人口の減少が続き、直近の高齢化率は約27.7%2016年)です。2036年には33.3%3人にひとりが65歳以上と推計され(内閣府・平成29年版高齢社会白書)、経済規模縮小の可能性、医療費・介護費など社会保障の給付と負担のアンバランス、財政の持続可能性など諸々の問題が社会全体のものとして実感を増してきています。

介護業界は、個人の価値観と家族のありようの変化を含め、人口規模・人口構成の推移に伴う社会構造の変化を見通しつつ、3年に1度ペースの介護報酬の改定によって、事業環境に大きな影響を与える対応必須の変動要因を内包します。人材不足は恒常的であり、職場環境を改善するための制度・テクノロジー・システム等の採用の検討や、マインドとスキルをともに育成する体制をもって人材をひきつけ維持することも、経営層・リーダー層にとって切実な課題です。

今回研修を実施された東京都生協連の会員生協様が運営する介護事業所でも、人手不足やヘルパーの育成、チーム内外のコミュニケーションなどなど、そのチームリーダーや事業所長は人材育成・職場風土改革など重要な課題に向き合っています。
同時に、昨年度の研修時の振り返りから、チームメンバーのマネジメントに関わるリーダーの立場にあっても、日ごろは介護や制度に関する専門知識とスキルの研修がどうしても優先され、リーダーとしての役割や人材マネジメントについて学ぶ機会は後回しになりがちであることが確認されました。
 
そこで今年度のマネジメント研修を通じてリーダーとして自信を高め、より良い職場づくりに取り組んでいけるようにとの主旨のもと、昨年度より1回多い全3回の連続ワークショップのご依頼をいただきました。

◆第1回「より良い職場をイメージする」(928日)
今回の研修で大切にしたことのひとつは、介護事業に携わる生協事業所のリーダーたちのネットワークづくりです。まずは相互インタビューでお仲間と知り合う自己紹介ワークからスタートしました。

日頃から責任ある立場で、部下であるスタッフたち・利用者様とご家族の皆様・医療等関係機関・行政関係機関・地域の方々まで、価値観はもちろんのこと、ときに利害もそれぞれに多様なステークホルダーとの対話経験を積まれていますので、冒頭から持ち前のコミュニケーション力を発揮され、どのグループも温かな雰囲気です。

1日目に取り組んだことは「“より良い職場”とはどのような職場なのか?」を言葉にし、具体的にイメージすること。まずは各自、思い思いに現状を付箋に書き出したのち、グループに1枚配布の伝版®「花」のまわりに貼りだしてメンバーで共有します。自然と「あるある!」「そうですよねぇ。」と共感やお互いへの労いの言葉がでてきます。

ほかのメンバーのイメージにも刺激を受け、自分のイメージがさらに膨らんだところで、今度はらくでんのグラフィックツール『伝版®』を使っていきます。まずは「花」のグラフィックの伝版®から。6枚の花びらに、「こうありたい!」「こうなっているといいなぁ。」と浮かぶ内容を載せていきます。すると、グラフィックの「思考」や「整理」を始めることを助ける力も手伝って、それまでの漠然とした思いが、だんだんと明らかな内容に。

2つあったグループ双方が“より良い職場のありたい姿”として「職場のコミュニケーション」に焦点をあてていました。所属生協や事業所は違っても課題は共通しているようです。
 
◆第2回「リーダーとしての役割を理解する」(1116日)
2回は、初回の気づきをふまえて実際にアクションを起こすことを重視し「取り組みたい行動の検討&実行期間」として1カ月をおいて実施しました。
まずは各グループで前回描いた「より良い職場」にむけて、リーダーとしての役割をケーススタディ方式で学びます。急な予定変更に対応したり、メンバーのサポートや代替に急きょ入ったり・・・日ごろからプレイングマネジャーとしても忙しいリーダーのみなさま。現場でまさにありそうなケースを想定し、リーダーとしてどんな対応をするのがよいか、各グループで話し合いました。

事例と自分の体験とを重ねあわせ、各々のマネジメント上の悩みが互いに交流され、自然と「内省」がすすんでいる様子です。ここでも伝版®「花」を活用し、各自の気づきを言葉で表現=「見える化」していただきました。

気づきを現場に戻ってアクションにつなげるとともに、日常経験を通じ、この日のケーススタディについての打ち手を固めることを次回への課題とし、この日は終了です。
 
◆第3回「より良い職場にむけての行動プランをつくる」(1215日)
2回からのケーススタディを通じてご自身なりのリーダー像を少しづつあたためていただいたところで、より良い職場の実現へといざアクションを起こしたときに直面する「カベ=阻害要因」を考えていただきました。

「カベ=阻害要因」はとにもかくにも「見える化」が大事ですが、重い気持ちになりがちな作業でもあります。そこで、ユーモアあるグラフィックの伝版®「七人の敵」の力を借りることに!
「敵を言葉にする」ことを比較的ラクに短時間で進め、「カベ=阻害要因」を見える化ができました。様々なカベがあがりましたが、なかでも法律や制度などの外的要因と時間の制約が多くの方から挙がりました。
存在を具体的に認識できれば、すぐ解決に着手できないまでも、敵のラインナップを見て仕分けすることに始まり、個別に分析する/俯瞰する/自らの好奇心の力を借りて意識を転換するなどの工夫をし、つきあい方をコントロールすることがしやすくなります。

さて、全3回の締めくくりは来年度末のビジョン設定とその実現に向けたまずの一歩の行動プランの作成です。
これまでの気づきや学び、そしてご自身のリーダーとしての思いを盛り込んで、伝版®「木」をツールに“ありたい職場”を表現します。

スピーディに「木」を描きこみ、職場で明日から実践する行動プランづくりへ。管理者とのミーティングのもち方や、スタッフへの理解を深め、個人の力を引き出しチーム力をアップするための打ち手についてなど、みなさんそれぞれに、リーダーとしてのレベルアップをするための具体的なアクションまで決めることができたようです。各グループの発表ではリーダー同士として共感とエールのこもった拍手がおこりました。
 
余談ながら、今回の研修では、終了後にランチを兼ねた交流会がもたれました。介護事業所のリーダーのみなさんはそのお忙しい日常を反映して、誰もがスピード感あふれるお食事ぶり♪時間を大切にご参加者同士で活発に交流する姿がみられました!

後記:らくでんはこれまでの歩みを通じ、生協をはじめ、自治体・大学・NGONPO・企業などさまざまな組織体や、個々の研究者の先生方と協働しています。多様なありようのみなさまとご一緒することで我々自身の学びが耕され、創発力の鍛錬につながっています。2018年もさまざまなみなさまと出会い、協働できることを楽しみにしております。

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。


 

2018年1月6日

年始のごあいさつ

新年あけましておめでとうございます。
 
人の血管をつなげば余裕で到達?
「マナケウア山4205メートル」から見た夕日
年末年始は 生活の中でことさらに「数」を意識させられます。新しい年まであと何日 というカウントダウンから始まり、年が明けたら三が日、おせちの中身は奇数、黒豆は年の数だけ食べる等々、数字があちこちに顔を出します。
 
違う視点から人間に関する数字を探しておりましたら、こんな数字に出会いました。

人間の血管をつなぐと、その長さはおよそ10万キロ。これは地球を約2周半できる長さです。そして、言うまでもなく人体のネットワークの要である、その血管ネットワークも、生体イメージング技術の進化により、血管を通る物質を通して常にやりとりされている臓器同士の「会話」が紐解かれつつあります。巨大ネットワークから成る人体について明かされた科学的な事実が年始のテレビで紹介されており、興味深く見ておりました。

ところで、昨年2017年の楽伝は、グローバル社会を生き抜くツールとして英語にフォーカスしました。そしてコミュニケーションにおけるコトバ偏重を越え、カラダ全体を使って行うことの重要性に注目し、即興演劇の手法であるインプロビゼーションを用いた英語のワークショップを本格的に始めました。
言ってみれば、コミュニケーションにおける「頭でっかち」スタンスを離れて、英語というコトバだけれども コトバ「だけじゃない」在り様のコミュニケーションを「英語のインプロビゼーション」という形式で模索したのです。

相手がどのような背景のどのような人であっても、その相手に伝えたいという気持ち、それを表現しようと試行錯誤する勇気、創意工夫の過程で身体全体からにじみ出る個性、動き・音・形・色・大きさ等々、コミュニケーションにおける「丸ごと」感を大切にしたい、と考えた末に生まれたひとつのチャレンジです。 

ほんの少し前までは、「脳」を司令塔とするトップダウンの人間観が幅を利かせていました。しかし徐々に明らかになってきたのは 人間が脳だけの指令で存在しているのではなく、臓器同士のコミュニケーションを通して生命を成り立たせている、というダイナミックな相互作用の姿でした。
これは、人間が、一極集中ではなく多元的なネットワークで成り立っているのだといういわば、人間観についてのパラダイムシフトとも言えましょう。
 
団体の設立以来、楽伝は一貫して「個」を重視するスタンスですが、上のパラダイムシフトを当てはめると、その「個」というコトバで表される一人の人間は、司令塔に支配される存在なのではなく、相互依存的な巨大ネットワークそのものだったのだ、と表現することができます。

さて、巨大ネットワークと言えば頭に浮かぶのは人体ではなく、ITAIなどの先端技術でしょう。特に情報を蓄積して日々進化し、課題解決に資するAIはどんどん生活に入り込んでいます。「AIに人間は仕事を奪われる」という悲観論が幅をきかせている節もあります。しかし、AIができること、ではなく、AIができないことに注目すると希望がありそうです。

AIにできないことは「動機を生ずる」こと。AIは 課題を設定されればその解決方法を見出すことはできるが、課題を見つけようとする「動機」がないのです。

人という「個」が「動機を生じさせる巨大ネットワーク」なのだということを認識すれば、AIを殊更に恐れずとも、素直に「個」の可能性を追求されてしかるべきだ、と感じます。そしてさらに「個」である人と人同士が つながり、地域を越えて、人種や性別を越えて他者と協働することは、「動機を生じさせる巨大ネットワーク」同士の交流とも言い替えられます。その交流によって生まれるポテンシャルを明確にそして常に意識すれば、人はもっと素晴らしいことができるに違いありません。

「動機を生じさせる巨大なネットワーク」である「個」の存在をより意識して、「個」と「個」の掛け算にチャレンジする、英語インプロはそのチャレンジの表現型。小さな団体の小さな試みですが、いいんじゃないかと思っています。このちっぽけな身体の中を縦横無尽にかけめぐって、何かを伝えたり、運んだりしている巨大ネットワークの一つである血管をつなげると、およそ10万キロなのですから。 

昨年本格的に開発・実施されたこのプログラム。今年もさまざまな地域で多様な人々と、英語インプロを通じて交流をしたいと思っています。私とは異なる「動機を生じさせる巨大ネットワーク」を持つ皆様とどこかでお会いできますよう。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

理事長 西道広美 拝

*写真撮影:らくでん社会教育部 辻野恵美子


 

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