2018年5月25日

演じて、感じて見出すチームコミュニケーションワークショップ【後編】

インプロワークで耕す~市村自然塾関東スタッフチームのみなさまと

台本のない劇
役割設定を受け取り、むずかしいお顔
こどもたちが生きる力を大地から学ぶ機会を提供する特定非営利活動法人市村自然塾関東。らくでんが今回ご一緒させていただいたのは、こどもたちの農作業や共同生活をサポートするスタッフチームのみなさんです。それぞれに異なるキャリア・専門性と志をもって参画しているのは、ボランティアスタッフも含め20代から60代までのみなさん。新年度を前に、さらに互いの強みを活かし「有機的に協働するチームコミュニケーションの勘所」を模索しようと、今回の研修が実施されました。

っそく前編につづく、午後のセッションの様子をご紹介しましょう。

 >>前編はコチラ

◆第2部:伝える体験・伝えられる体験に学ぶ
《なりきり説得ワーク》
2部は、より即興要素を強めたインプロワークに移ります。
まずはペアでの説得ワークで肩慣らし。

予め設定したミッションのもと、利害の反する役割になりきり、なんとか相手の心を動かそうとコミュニケーションを模索します。ここでもスタッフチームメンバーのしなやかさが光り、ユニークな説得ストーリーがたくさん登場しました!

《台本のない劇》
いよいよ2チームにわかれて短い即興劇に挑戦です!
今回は「整形外科の入院病棟」を舞台に、利害関係のある設定の患者やその家族・看護師などの役になりきり、台本のない劇を演じていただきました。

持ち時間のうちに実現したい「あるミッション」だけを共有した4名は、思い思いに即興でセリフを考えながら発話します。もちろん打合せナシ、練習もナシ!4人が共通して知っているのは「整形外科の入院病棟が舞台であること」。そして「持ち時間のうちに実現したい1つのミッションがある」ということのみです。

まずはAチームが舞台へ♪ 

いやはや、たいへんです。相手役の設定はわかりませんから、自分の役情報のみをふまえて行動してみます。他のメンバーの役を想像して話しかけてみるも、情報不足のため役違いだったり。自分の情報を独り言のように発信するも、相手は自分ごとで頭がいっぱいで情報をキャッチしてもらえなかったり。

おかげでボタンはいい塩梅にかけちがい、舞台は役者さんたちの意図とまったく関わりなくコメディと化し、大爆笑のエンディングとなりました。
てんやわんやの第1ラウンド!4人の役者さんたちの全力投球に惜しみない拍手がおきました。
 
さて、観客だったBチーム。なるほど、見ていてわかったことがあります。「自分から情報を発信しないことには話が始まらない!」―コミュニケーションの基本ですが、即興劇ではとりわけしみじみ体感されます。

「ヒントになったでしょ~」と演技を終えたAチームにプレッシャーをかけられたBチーム。
役割設定も新たに、出陣です!

さっそく学びを活かし、各メンバーが積極的に発話しようとされています。自分に没頭する仲間の様子に気づいて舞台を俯瞰し、チームが共有するミッションに向けて働きかけるメンバーも。

即興ゲームでの躍動感ある1シーン
その場、その瞬間に自分を表現することを求められる即興の環境では、自ずと日ごろのコミュニケーションの特徴(よい面も、課題となる面も。)がふだんに増してくっきりと表出します。

自分を離れた「役」でのなりきり舞台ですから、このワークでは、失敗も成功も大爆笑とともに演者も観客も楽しんで受けとめることができます。大きな拍手を受けて舞台をおりるみなさんも観客も、「なるほど、なるほどなぁ。」と感慨深げ。

◆第3部:体験からの学びを言語化する
さて、後半は腰を落ち着け、伝版®「花」のシートもつかい、ここまでの体験からコミュニケーションについての学びを言語化し、このチームとしてのコミュニケーションの勘所を洗い出します。

即興ワークとはうってかわり、「う~ん」とうなったり、じーっと静止。長い沈黙を重ねる時間となりました。やがてひとり、またひとりから、想いが語られます。

・劇では、自分のコミュニケーションの課題をきれいに取り出したようだった。
・きもちがこもっていると圧倒的に伝わる。こどもたちに対しては自然にできているが、スタッフ同士のコミュニケーションでもいかに“きもちを乗っけて伝えていく”か!
うまくいかないことがあったとき、「じゃぁ、どうする?」というところを、もっとみんなの知恵を共有して考えていけるようになるといい。

ファシリテータはあえて時間で止めることなく、見まもっていきます。メンバー全員が発話する中から、みなさんが共感して共有できるキーワードの断片が「」のシートに記されました。メンバーはゆっくりと、想いをさらに言葉にし、キーワードを磨いていきます。

◆多様な“チーム”のありようとチャレンジ
ファシリテータのひとり、らくでん理事・山本由紀子は振り返ります。

“前半の即興ワークではのびのびと、独創的な表現が次々と飛び出し、思わず私たちも楽しませていただきました。対して後半は、うってかわって沈思黙考つづくひととき。

その対照的なありようこそが、組織メンバー各自が自らの専門性をもって対人業務に従事する“現場型チーム”ならではと感じます。”

教育や福祉の現場(例:学校、塾、病院、介護施設)や顧客対応組織など、「現場型チーム」の特徴は、メンバー各自が“顧客に対する”業務に切れ目なくあたる時間が業務の中心を占めます。感情労働を主とし、目の前の顧客に関わる具体的な事象と日々向き合います。


「顧客と自分」ののコミュニケーションに大きなエネルギーを投下するうち、横のつながりであるチームメンバー同士のコミュニケーションに“日常業務のなかでは”エネルギーが充分まわらくなりがち。

“だからこそ、ときに日常をはなれ、さらには日常業務での役割から脱皮して体感的に気付きを得やすい手法で、自分のコミュニケーションのよさ(強み)や課題をみつめ、チームで連携できること・心がけたいことを探索する機会を創ることが大切です。”(山本、上写真 中央)

すべてのワークを終えたリフレクションタイム。
みなさんからはこんなコメントが・・・

・構え過ぎず“気楽に”アクションをとってみる!チームメンバーのことをもっと知りたいと思うようになった。
・もっと「自分」を出していい、自分からはたらきかけてみよう、と思う。このメンバーなら大丈夫、受け入れてくれるチームだと感じた。
・相手を知ると、その分考えることも増える。このコミュニケーションをどう還元していくか、考えてみたい。
“言い合い”“聴き合い”を大切にしていきたい。それぞれちがうけれど、お互いを受け入れることのできるチームだと思った。
・滞っていたものがすっとしたように感じる。スタッフ同士も子どもたちにも“気楽に”オープンに接していきたい。

◆研修から1カ月半が経ちました
雨の日も。元気な雑草と格闘
先日、高津戸良太塾頭にチームのご様子をおうかがいしました。全体としていい変化が見えてきているとのこと。

『気楽に』という合言葉がよく登場し、声掛けが増え、チームの雰囲気が柔らかくなりました!

会議では前より活発に、細かなことも含めて気軽に確認や提案が進んでいます。作業前の打合せ時間が短縮し、外での作業開始が早くなったように感じます。

農作業でも、単独での農作業が減り、声掛けをして他の場所の進行を確認する様子が見られます。

また、子どもたちに対して年度初めにありがちな「様子見」が「見守り」に変わり能動的な聞き取りなど、早めにコミュニケーションをとっているようです。

今後もメンバーが変わるタイミングでのチーム状況の確認や、活動の振り返り、1シーズン終了後の研修など、チームメンバーとチーム力の育成に取り組みたいと考えています。”


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スタッフチームの変化は、結果としてこどもたちがより安心して自己開示を進めたり、学びあいを進めやすい環境づくりを促進するでしょう。さらにスタッフ同士の関わりを間近にみることを通じて、こどもたちが協働について自然に学ぶことも!市村自然塾がこどもたちにとってますます学びある体験場になりそうですね。

《ご参考》
◆チームビルディングワークショップ
>>JICAプロジェクトチームの皆さんと

◆異世代交流ワークショップいろいろ
>>岡山県奈義町・奈義町教育委員会主催:出生率日本トップクラスのまちでのワークショップ
>>子ども夢基金助成事業:英語ゲームで世代・国を超えて楽しく交流ワークショップ


*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。


2018年5月18日

インプロワークで耕す、チームコミュニケーションワークショップ【前編】

有機的連携をめざして~市村自然塾関東スタッフチームのみなさまと

即興ゲームの1シーン、全員で「市村自然塾♪」
ここは神奈川県足柄上郡松田町の寄(やどりき)。西丹沢の山あいの高台に、いくつもの畑に囲まれるようにしてある市村自然塾関東です。

山も畑も春の顔になりはじめたころ、市村自然塾関東の活動を支えるスタッフチームのみなさんと1Dayワークショップをご一緒するため、らくでん理事/ファシリテータの山本由紀子柴山純が訪問しました。

門をくぐると、農作業には不可欠のスペースだという、とても広い土間にまず驚かされます。
靴を脱いで板間にあがるとなんだか懐かしいきもちに。

こどもたちとスタッフのみなさんが食事や話し合いの活動のときにいつも集まるという1階のお部屋は、陽あたりがよく明るく広々!

◆生きる力を大地から学ぶ
市村自然塾は、株式会社リコー及びリコー三愛グループの創業者・市村清氏の生誕100周年を記念し、2001年に設立された特定非営利活動法人です。生きる力を大地から学ぶ機会を創り、こどもたちに提供しつづけています。

毎年3月上旬から、こどもたちは9カ月の間に、18回にわたって23日(金曜夜~日曜午後)の共同生活を!農作業を中心に、食生活・自然科学体験などさまざまなことに取り組みます。

小学4年生~中学2年生までの男女56が関東一帯から参加し、今年は3月4日の入塾式をスタートに活動中です。

設立以来すでに17期を迎え、入塾式の運営ほか折々の活動には、卒塾生のこどもたちも参加してくれるそうです。

足柄茶のお茶摘み 夏も近づく八十八夜♪
3月 ゴボウを育てる穴掘りに、種まき。

4月 ジャガイモ・ダイコンの観察、キャベツ・レタスの植え付けに、味噌づくりも。

5月 ちょうどいまご当地のお茶「足柄茶」の茶摘みをしての茶づくりも(右写真)サツマイモの植え付けやラッカセイの種まきも始まります。

このあとも季節ごとのお世話・収穫・植え付け・種まきが11月の卒塾式まで続きます。

土間のかべには、1年を通じた農作業スケジュールが張られており、その作物数の多さと、育てるだけでない作物を通じた体験の豊かさにらくでんスタッフはびっくりしました。 


◆「4無」を大切にした成長支援
そんなこどもたちを滞在中サポートし、また、こどもたちの留守にも畑を見守り、運営を可能にするのがスタッフのみなさんです。

滞在中の親代わりとなる塾頭、塾生たちをそばでみまもる世話人のみなさん、農業指導や看護などの専門スタッフ、運営を支える事務長をはじめ事務職員の方々がよりそいます。
 
活動内容によっては、株式会社リコーやグループ企業から有志の社員のみなさんがボランティア参加することもあるそうです。

スタッフにヒントをもらいながら、畑で考える
市村自然塾では、スタッフがこどもたちへ関わるときに大切にしている、自然の摂理に学んだ「4無(4つの「●●ない」)」という考えがあるとのこと。

4無=「指示しすぎない」
   「命令しすぎない」
   「教えすぎない」
   「世話をやきすぎない」

それぞれの環境で、自ら力を発揮して根を張り、芽を伸ばし、変化を受けとめて成長していく農作物を思わされます。

◆多世代・多様な専門性もつスタッフチーム 
現在のスタッフは実に多様な顔ぶれです。とくに、こどもたちと日常的に関わる男性3名、女性3名の世話人のみなさんは、多様なキャリアを歩み、異なる専門性を磨き、その方ならではの志をもってここに参画されたメンバー!20代から50代と、キャリアのステージも、市村自然塾関東とのおつきあいの長さもそれぞれです。

そんな多様性に富むからこその心強いチームですが、4グループに分かれたこどもたちが毎週末交替で滞在する9カ月の間は本当に大忙し!
それぞれの専門領域が際立っていることもあり、メンバーが“有機的に連携する”よりは、自分の“持ち分に各自専念”して役割を果たす状態だったといいます。

そこで新しい期のスタートを前に、互いの強みをさらに活かして「有機的に協働するチームコミュニケーションの勘所」を模索する機会として、今回の研修実施を決められました。 

農作業をし、こどもたちと直接関わり、からだもこころもやわらかいご参加者と心得て、らくでん身体性・即興性の高いワークを取り入れ、チームコミュニケーションのありようを体得』する1Dayワークショップをご用意しました。プログラムは3部制。
それでは第1部を覗いてみましょう!
 
◆第1部:コミュニケーションゲームでひらく
クワをつかうのにも すこしずつなれて
まずはカンタンな即興ゲームや、らくでん式英語インプロワークショップでも多く取り入れる英語をつかったインプロゲームでのアイスブレーキング。

あいさつゲームや、指1本で相手に働きかけるパペットゲーム。ノンバ―バールなコミュニケーションだけでタイミングをあわせるゲームなど。 

軽く動いたところで「なりきり写真ゲーム」へ。
2チームに分かれ、各チーム2つのお題に取り組みました。

最後は「市村自然塾の春夏秋冬」をお題に“全員で”チャレンジ♪ - 春の芽吹きに始まり、外遊びにはしゃぐこどもたち、名物・ゴボウや、苦労して収穫した達成感あふれるこどもの笑顔、はしゃぎすぎを注意するスタッフ&我に返ってシュンとするこどもなど ー 市村自然塾のあるある場面が1枚の写真におさまりました(冒頭のお写真)。 

新年度が始まる前でホンモノのこどもたちはいないのですが、演技力あるみなさんのおかげで、らくでんのファシリテータたちも、市村自然塾の “活気あり!笑いあり!” の日常を一瞬にしてとても身近に感じることができました。
 
それにしてもさすが日ごろから、いろいろな学齢の、個性も多様なお子さんたちとやりとりされているみなさんです。ノンバーバルのコミュニケーションもたいへん豊か!

1部のしめくくりは、ノンバーバルコミュニケーションに意識を払い、間合いをはかるBAMB SHOOT(たけのこ)ゲームです。


ほかのメンバーと数字が重ならないよう、互いに間合いをはかりカウントします。45人のグループでも最初はむずかしいですが、感度の高いこの日のメンバー!さいごはらくでんスタッフも加わり10人で挑戦です。

何度も失敗を重ねるうちに、各メンバーが反応するタイミングや事前兆候がだんだんとわかってきて ー 自分の特徴をふまえて失敗の少ないタイミングをみはからって飛び出すひと、相手に意識を集中してタイミングをねらうひと、グループ全体をみて一番むずかしいタイミングを引き受けるひと ー チームの中でそれぞれの役割を見出しながら挑戦が続き、ついに、ランチタイムを前にみごとにやりとげたみなさんでした。

さて、つづく午後の模様は次号でご披露しましょう。どうぞお楽しみに!

◆ご参考
>>株式会社リコーの社会貢献
リコーグループはサステナビリティへの社会的取り組みとして、事業を通した社会課題解決と並行して、事業領域内外に関わらず重点を決め、社会貢献活動を継続的に実施している。会社や社員が直接実施する活動のほか、社会課題の解決へと活動するNPONGO等の支援も含む。
 
市村自然塾は、リコーグループの社会貢献活動の中で「次世代育成」を促進する活動に位置づけられ、株式会社のマネジメント層が役員をつとめ、社員・元社員のみなさんがボランティアとしても参加する。

>>チームビルディング研修のその他事例
ダイバーシティを活かす、チームビルディング・ワークショップ
 

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。



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