2016年12月26日

キャリアデザイン再考 by 西道広美

VUCCA Worldを生き抜く戦略としてのキャリアデザイン

この一年、社会教育と地域振興を軸に楽伝は試行錯誤し、活動を拡げ、小学生のこどもたちから幅広い世代の社会人まで、さまざまな皆さまとご一緒させていただきました。
 
“キャリアをひらく力を育む”という目的は共通ながら、フィールドは実に多様で異なる企画の一つひとつを通じ、楽伝は“今ここにある時代”と“すでに始まっているこれからの時代*VUCCA Worldブッカ・ワールド)”をさまざまな角度から考察する機会に恵まれたように思います。
*「VUCCA」とは、変化しやすく(Volatile)、把握できず(Uncertain)、混沌とし(Chaotic)、複雑で(Complex)、多義的な(Ambiguous)という5つの言葉の接頭語を合わせた略語。

そうした考察の一部を皆さまと共有させていただきたく、理事長・西道広美が「キャリアデザインの根本=一人ひとりがよりよく生きるための戦略」に立ち返り、ブッカ・ワールドを生き抜く戦略としてのキャリアデザインをテーマに、シリーズにて執筆中です。折しも来る年に想いを巡らす頃、皆さまにご高覧いただければ幸いです。 

◆第一回 キャリアとキャリアデザイン~再考の必要性
キャリアデザインの思想は、世の中がどうあれ、また組織に所属しているかどうかにかかわらず、すべての人に対して、「一人ひとりがよりよく生きる」ために戦略を持つことを促します。すでに始まっているというブッカ・ワールドにおいて、キャリアとキャリアデザインの意味をどうとらえなおすのか ― 我が国のキャリアデザインの現状をふりかえりつつ、我々の視座を明らかにします。
>> 第一回 再考の必要性

◆第二回 起業家に学ぶスキルと多眼・複眼的アプローチ
何がやりたくて、何が可能で、その中で何を軸として持ち続けていくのか。ブッカ・ワールドにおいて、自分と周囲の折り合いをつけていくのは容易ではありません。第二回では、ブッカ・ワールドの先住民である「起業家」のありようにキャリアデザイン視点で学びながら、ブッカ・ワールドを生き抜く術について“多眼・複眼的アプローチ”に着目して考察します。
>> 第二回 起業家に学ぶスキルと多眼的アプローチ

第三回は「キャリア・アンカー再来」をテーマに、新しい年に発信させていただく予定です。

今年もあと数日になりました。折しも本日、楽伝の本拠地・黄色い家の2階ではらくでん式こどもいんぷろ英語ワークショップが開催中。たいそうにぎやかです!この楽しい模様もいずれご報告させていただく予定です。

それでは、みなさま、どうぞよい新年をお迎えください。

◇ご案内
12月28日(水)より2017年1月4日(日)まで楽伝は年末年始のお休みをいただきます。 

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2016年12月1日

事業所を越えたネットワーキングで、よりよい職場づくりを!

開催報告:介護事業者マネジメント研修

楽伝はこの秋、介護事業所のリーダーの方々を対象とする研修にファシリテータを派遣しました(主催:東京都生活協同組合連合会 以下、東京都生協連)。生活協同組合は、組合員のくらしの改善・向上の実現に向けて、地域・職域・大学・医療・共済・住宅など多様な領域で活動しており、介護事業所を通じたサービスの提供もそのひとつです。生協組合員と地域住民の方々がご利用者です。
1カ月をはさんでの全2回(各2時間)の研修には都内で活動する医療生協、地域生協など、様々な生協から13名の方が参加しました。
 
多くの事業所は地域密着の小規模型で、サービス向上に向けた人材育成・運営のあり方等の課題に、日ごろは個別に取り組んでおられます。しかし地域はちがっても、たとえば、忙しすぎてチーム内のコミュニケーションが十分でなかったり、人手不足やヘルパー高齢化など人材に関する悩みがあったりと、共通する課題はとても多いもの。「課題や悩みにもっとよいアプローチを考えたい」「相談できる他の事業所の仲間がほしい」などの現場からの声を受け“より良いケアの提供に向けた職場づくりに貢献できる人財になる”を目標に、今回の開催となったそうです。
それでは研修の模様をのぞいてみましょう。

◆第1日目「現状を俯瞰する」(9月15日)
ほとんどの参加者が互いに初対面。会場に入る皆さんの様子は日ごろの重責を肩に、ちょっと緊張気味でしょうか。そんなお一人ひとりに楽伝のファシリテータが笑顔でごあいさつします。

今回の大切な目的のひとつは介護事業に携わる生協事業所間のネットワークづくりです。まずはA4サイズの伝版®「花」をつかって相互インタビューを重ねる“楽伝アイスブレーキング”。ていねいな自己紹介ワークからスタートです。皆さんすぐに持ち前のコミュニケーション力を発揮されて、会場の音量・温度とも一気に上がったようです(笑)

第1日目にメインで取り組んだことは「職場の現状を俯瞰してとらえること」。
日ごろは喫緊の課題への対応優先になりがちで、事業所全体としての現状を俯瞰する機会がなかなかないものです。まずは皆さん各自、職場を振り返り、コトの大小も関係性もいろいろな“自分がひっかかりのあったことがら”を洗い出し、整理します。大きなサイズの伝版®「花」をつかって進めます。

ところで、こうした「簡単には整理できないこと」「考えづらいこと」について「思考」や「整理」を始めることを助けてくれるのがグラフィックの力!評価する目的ではなく、書いたことに正解・不正解はなく、優劣もありません。

続いて、伝版®「花」で俯瞰した現状をチームで共有してみると、共感や承認、ねぎらいの言葉が行きかっています。どうやら皆さんが当初思っていた以上に、課題は共通するようです。現状を踏まえた上で、どんな職場にしていきたいか、思いを出しあっていきました。

最後に、それぞれがメンバーとの交流を経て“よりよい職場にこれだけは欠かせない!”と実感したことを言葉にし(「花」に記入)、その実現にあたり課題となるであろうことを具体化しました。課題を「敵」にみたて、伝版®「七人の敵」をつかって洗い出しです。具体的になった敵については、次回までの1カ月間に、対処法を考えて試しに実践してきていただくことに!

◆第2日目「ありたい姿に向けて」(10月13日)
前回より格段に大きな「おはようございます」の声とともに、約束するでもなく時間よりずいぶん早くに集まられた皆さんでした。早速この1カ月のアップデートが始まっているチームも。こういう自然な変化にたちあうとき、ファシリテータは結構うれしいきもちになります。

この日は、前回の伝版®「七人の敵」をつかっての宿題(課題の解決案を考え、試しに実践)の振り返りからスタートです。

この1カ月間に「行動を起こしたこととその結果」をチームで共有してみると・・・
職場ではとりわけ人を見守り、育てる立場にある皆さんだけに、コミュニケーションに関する挑戦が多かったようです。たとえば、挨拶するときの声かけやスタッフの話を聴くときの表情・姿勢など、ほんのちょっとしたことを意識して変えることで、コミュニケーションがぐっと取り易くなった!など、変化を実感しているという報告が多く出されました。ファシリテータが伝えた「自分が意識する・自分が変わることで、何かが動く!」を実感いただいたようです。

チーム交流しながら気づいたことはどんどん伝版®七人の敵」に書き加え、「七人の敵」がリッチに埋められたところでシートを手に皆さんが移動します・・・二人、三人とまだ話したことのなかった参加者を探しては、この一カ月の経験を立ち話で共有し、どんどんチームをシャッフルしていきました。

何人もが同じことにチャレンジするとしても、経験のありようはさまざまです。また「ある経験」にしても、人によってそこから得る学びはいろいろです。仮にAさんが「自分がある経験から学んだこと」をBさんに共有したとしましょう。Bさんは「Aさんが気づいたこと」を参考にするだけでなく、「Aさんの経験」からBさんならではのAさんと違う発見をすることもあります。そのBさんの発見を聴いて、Aさんが自分の経験をまたちがった角度でみつめることもあるでしょう。

さて、アイディアいっぱいになったところで、いよいよビジョンづくりのスタートです。伝版®「木」をつかい、半年後の《ありたい職場の姿》を具体的にイメージしました。「設定した目標を目安に行動を始めていくことは大切ですが、変化の時代にあっては長期・大局・根本を基本として、一喜一憂しすぎず柔軟に《軌道修正する力》こそが肝心!」そんなファシリテータのメッセージもそえながら、大きな目標に向かい、行動計画を策定しました。

いよいよ研修もしめくくりです。お互いのお顔がみえるように全員で輪になり、半年後となる今年度末までに「こんな職場にしたい!」というありたい姿とご自身の行動計画を発表していただきました。「普段は別の生協、事業所であれ、目標を共有することでお互いがお互いのサポーターになろう!」という気持ちをこめて、拍手を送り合う温かい場となりました。
 
終了後は、主催者である東京都生協連の働きかけを受けて、年度末の「ありたい姿」実現に向けて、途中報告や交流を目的に第3回の自主的な集まりを実施することが決まりました。
“必要だと思ったらいつでも学び合うことができる”生きたネットワーク、たしかにうまれたようですね!

【参考】そのほかのチーム・ネットワークづくりの現場における伝版®活用の一例
  >>ダイバーシティを活かすチームビルディング(JICAプロジェクトチーム)

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2016年11月21日

第2回《らくでん式・英語インプロワークショップ》やります

カラダとココロを動かし、未知と向き合う力を養う

春の第1回の様子
らくでん式こどもいんぷろ英語ワークショップ
お待たせしました。春に初開催してたいへんご好評だった、らくでん社会教育部主催《らくでん式・英語インプロワークショップ》。いよいよ12月に、第2弾を開催します!

ちょっとおさらいしますと「インプロ(improvisation)」とは台本のない即興演技のこと。俳優など演技者のためのトレーニングとして長らく用いられている手法です。「せりふ」の拠り所となる台本ナシに即興的にシーンを創っていくには、自分がいまどのような状況にあるかを瞬時に考察・判断し、「話=筋を見出し」動く必要があります。「未知」な状況といかに向き合い対応するかが試される訓練といえます。

たとえば学校や塾のテストで英語の得点が良くても、外国人を目の前にしたとたん無口になる・・・あるある、ですね。

◆なぜ、持っている知識をアウトプットできないのだろう
かなり多くの日本人の課題かもしれませんが、こたえの一つはコミュニケーションの「訓練不足」。英語であれ日本語であれ、会話というものはそもそも「未知」との遭遇!自分の期待通り、予測通りのこたえがいつもかえってくるとは限りません。ときに瞬時に大掛かりな軌道修正することを含め、臨機応変な受けこたえが必要です。

「とにかくやってみる」⇒「意外となんとかなって自信が芽生える」⇒「間違いを恐れずやってみる」⇒「自信が育つ」・・・と実践を重ね、らせん状に成長していくことをめざす。そんな経験をぎゅっと圧縮してできたらどうだろう?!

ということで第2弾開催です。今回は、コミュニケーションの中でもとくに英語の会話術に焦点をあて、小中学生対象《らくでん式・英語インプロワークショップ》を開催します。参加者一人ひとりがこれまでの知識を存分に、自信を持って出すこと、間違いを恐れない心を育てることを目標にします!

◆幸せに生きる力とは
ところで、すでにおとなである親たちよりずっと先の時代を生きていくこどもたちにとって、このプログラムはどのような意味があるでしょうか。時代を先取りし、国内外の企業で多様な人材からなるチームをまとめ、結果を出すことを求められた管理職経験をもつ方に、ご意見を伺ってみました。

「なるほど、このプログラムは『誰とでも友だちになれる』力を獲得するきっかけになりますね。私自身はこの力こそ、これからの時代に《人生を幸せに生きる》上で不可欠な能力だと思っています。英語も1つの道具として使いつつ、多種多様な背景をもつメンバーと仕事をしてきた中で、今の時代だからこそ!と、私が実感することが2つあります。」
 
「1つは、白黒のつかないことの多い『あいまいさのある状況下で目的をもって他の人と一緒に解決策を組み立てていく力』の重要性。もう1つは、英語は『たかが&されど重要な伝達道具』であること。『誰とでも友だちになれる』人はこれらを肩ひじ張ることなく持っているように思います。
今こどもであるみなさんたちの人生は、多種多様な人々と関わりあって生きていくことが「前提」です。その「前提」に不可欠な能力をこうしたプログラムを活用し、楽しみながら身につけ、さらに自分で高めていくきっかけにできるといいですね。」

◆こどもたちの変化
春の第1回開催後のお話です。「あの日から子どもの様子が変わった!」と保護者の方々からご連絡が入りました。今までたとえば「予習しない」「自分から発言しようとしない」「質問されるとなんとなくごまかす」「テストの点が低い」だったのが、まずわかりやすいところでいえば「テストに満点が増える」、さらに「自分で考えて答えるようになる」「手を挙げるようになる」など。

指導する側も驚くほどの変化は、ワークショップでほんの数時間のあいだ「間違ってもそれを楽しむ」経験をし「やってみるってだいじょうぶ、いいもんだね!」を自分が体感したことが出発点でした。その体感した経験があるから、その後の日常でもさらに「やってみる」を重ねて自分で自信をもつように、さらには周りからの承認によりその自信を高め、さらなる挑戦へのエネルギーがチャージされているのでしょう。

さて来月の第2回ワークショップでは、どんな後日談がうまれるでしょうか。
私たちも楽しみです!
 
◆第回《らくでん式・英語インプロワークショップ》の概要
  日時:   2016年12月26日、27日 13:00~16:00
       *2日間のプログラムです。

  場所:   大阪府 大阪市天王寺区内

  対象者: 小学生、中学生

  主な内容:Day1 インプロの基礎:フォニックスの学習①/英語小噺/グループ練習
             Day2 インプロの応用:フォニックスの学習②/グループ練習後、全員発表

  定員:   10名さま

  参加費: おひとり様 13,000円(税別)

  主催: 特定非営利活動法人楽しく伝える キャリアをつくるネットワーク
      社会教育部         (通称:楽伝/らくでん)

  【お申込み先】
    Facebook: 発信力向上ラボ失敗を楽しも!即興型英語セミナー
            《らくでん式・英語インプロワークショップ》
           * 発信力向上ラボはらくでんの社会教育部の組織です。
 
   ◆Tel: 06-4305-7275 (らくでん社会教育部・辻野)
 
*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2016年9月29日

教育現場における伝版®の活用(韓国・蔚山大学)

伝版®を使った日本語専攻者のためのライフキャリア支援プロジェクト

この夏、楽伝は本拠地・黄色い家に久しぶりのお客様を迎えました。一時帰国された、韓国・蔚山大学(ウルサン・蔚山広域市)日本語日本学科で教鞭をとる小松麻美先生です。この日は楽伝との共同研究「伝版®を使った日本語専攻者のためのライフキャリア支援プロジェクト」について、中間レビューを実施しました。

パイロット授業が行われた研究室にて

出会いは、2年前に京都で開催された日本心理学会第78回大会での発表の場。楽伝は「コミュニケーション教育に資するグラフィックツール」と題し、伝版®のねらい、開発の経緯、伝版®の効果、さらに企業・大学・行政等における主にキャリア教育における活用実績をご紹介していました。小松先生は、学生たちの生涯発達に力を与えるものとして「語りによる学習(ナラティブ学習)」を重視し、周囲に日本語環境のない中で“日本語で話す”ことが前提とされる韓国の大学における日本語専攻科目を、学習者一人ひとりの「語り」を引き出す絶好の機会と捉えておられました。その「語り」を引き出すツールとして、我々の発表内容から伝版®に期待を寄せていただいたのでした。以来、韓国と日本、リモートでの情報・意見交換に加え、一時帰国された機会を通じて準備を進め、現在の共同研究スタートに至りました。

今年度はまず、日本から韓国を学びに訪ねた日本人留学生を対象に、自らのキャリアデザインに取り組むミニワークショップを実施したのち、蔚山大学在籍の韓国人大学生を対象にワークショップを展開しました。

2014年、日本心理学会第78回大会での出会い
小松先生:《川》《花》《木》《発芽》といった伝版®を前にして、日本語学科在籍中とはいえ、母国語でない外国語である日本語で韓国人の学生たちが熱心に記載してくれた様子は期待以上でした。伝版®は、自然をモチーフにしたシンプルかつカラフルなデザインが生み出す“気軽さ”も大切な特徴のひとつですね。内面の言語化を助け、可視的に表現することができます。海外の大学日本語教育現場では学習者間の日本語のレベル差が大きくなりがちですが、伝版®を使うことで“どの学習者も気軽に日本語で自らを表現することのできる場(学習活動)”を作ることができます。 

学生の皆さんからは「今まず何をしなければならないか」だけでなく、自分を知り、その先の自らの生き方を考えてこれからの行動を考える良い機会となったことなどが評価されていました。
  • 目の前のこと=就職活動ばかり心配していたが、その先のことを久しぶりに考えることができてよかった。
  • 現実的な問題にばかり気をとられ、本来私がやりたかったことを最近忘れていました。ワークショップで今までの私を振り返ることで、自分の夢をたしかめることができてとてもうれしかったです。
  • 日本語の勉強はただ漢字を覚えることだけではないと思った。日本語でのこのワークショップで自分自身を理解するよい経験ができた。今までの自分のことを考え、さらにこれから先へ進む時に必要なのが何か、考えるようになった。
大学生の皆さんに許可をいただいて、書いていただいた伝版®と、伝版®を使った感想を楽伝も拝見させていただきましたが、1)これまでのネガティブな経験についても伝版®に書き出すことで言及や捉えなおしがしやすくなったこと、2)伝版®に「書く前」と「書き出した後」及び「過去-現在-未来」など、時間の経過にそって自らを客観視できたこと、3)将来を考える(キャリアデザインを行う)という一連の活動に積極的に取り組むことによって Confidence(自信)が高まったことなども、伝版®使用の効果として、使用者(大学生)およびファシリテータである小松先生双方が認識されていたようです。

蔚山大学キャンパス
小松先生来訪のこの日は、日本の大学で、アジア各国から来て学ぶ大学生を対象にした講義を担当されている
柴橋美穂先生にも同席いただきました。こちらの講義も、学生にとっては母国語でない日本語で行われ、グローバル人材として働いていくことをめざす留学生にとって異文化である「日本社会とその文化」について、体験も交えて学びながら自らのキャリアを考えることにつなげていくものです。プログラムの一部である、自らのキャリアを模索する過程で伝版®が活用されています。

それぞれの地で大学生と向き合われるお二方のお話から、「外国語や外国文化を学びたい」という自らの《好奇心》をさらに一歩伸ばし、将来のありたい自分像との関わりを吟味し、具体的に行動することへの動機づけを、大学内外の他者との関わりを通じて大学時代のうちに促進していく重要性は、韓国でも日本でも共通の課題であることが確認されました。

今後、外国語を学習する大学生を対象に、語学や文化への興味を入口として、より具体的な将来の自分像を抱く動機付けを行うためのワークショップ形式の学習プログラムの設計のあり方や、日韓双方で担当された大学生を対象とする伝版®を用いた講義の結果を相互共有いただくことにより、「外国語で学ぶ」人を対象とした伝版®利用の効果について考察を続けていただく予定です。 

【参考】教育現場における伝版®の活用の一例


 
*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2016年9月1日

研究発表:転職経験者に学ぶ“転換力”

第31回国際心理学会議&日本心理学会第80回大会、発表を終えて

楽伝は、キャリア教育/キャリア開発への取り組みの過程で得た問題意識と知見を発信する活動として、株式会社伝耕と協働し、日本心理学会年次大会における発表を続けています。
さまざまな立場からこのフィールドに関わる専門家の皆さまに刺激をいただくことが毎年の楽しみです。

2016年は7月24日~29日に神奈川県横浜市(パシフィコ横浜)で共同開催された第31国際心理学会議(ICP)/日本心理学会第80回大会にて、発表を実施致しました。
 
今年度のICPは“Diversity in Harmony: Insights from Psychology”を開催テーマに、63項目のトピックにおいて研究や活動を通じた知見の発表が実施されました。

その中の“Industrial and Organizational Psychology(組織心理学)”のトピックのもと、我々はCareer Adaptability: A Qualitative Understanding from the Cases of Career Changers in Japanと題し、ポスター発表を行いました。

◆本研究テーマの背景
キャリアについて考える際、「変化の激しい時代」という枕詞がつくようになって久しいですが、年功序列や終身雇用の習慣・制度が根強い歴史をもつ日本社会で知見が蓄積されてきた「既存の組織内におけるキャリアの有り様」に関する考察だけでは、次世代への学びの契機としては十分ではないと感じてきました。

転職経験をもってキャリア形成をはかってきた人の割合がいまだ限られるわが国においては、自ら環境の「変化」を受け入れる選択をした転職者が「変化」の前後で、何をコンピテンスとして新しい環境に持ち越し、何を捨てて改編したのか、新しい環境で学んだことは何かなどについて、様々な事例や身近なロールモデルを参照して学ぶ機会はほとんどないのが現状です。

キャリアに関連して、今後どのような未来が待っているか、予測がつきにくい側面もありますが、個人が望むと望まざるとにかかわらず、変化に直面する確率(Probability)は今後いっそう大きくなります。

そこで、すでに変化を経験したキャリアチェンジャー(転職経験者)の戦略と、彼ら彼女ら自身の学びの経験《共有知》とすることを目指し、転職経験者8名の方を対象にした探索的インタビューを実施することを決めました。

◆キャリアチェンジャーに学ぶ“転換力”
転職経験者には、ライフヒストリーを語ってもらう形式で、これまでのキャリア、各キャリアにおける学び、キャリア間における継続性や適応可能性について多方面からお話をしていただきました。

8名の転職経験者の方に共通する「態度(行動に先立つ心構え)」は、保持すること」と「捨てること」、「新しく得ること」についての逡巡が少ないこと
― そこから浮かび上がったのが《転換力》です。

《転換力》とは、Aという条件の中で奏功した要素を未知のBという条件に適応させるための探索行動と,適用を試みる行動の二つを指すと、われわれは定義していますが、転職に際し、転職経験者は「転換」を生じさせやすい「3つの態度」を持ち、「2つの転換行動」を行うことで、新旧の環境(職場)をつないでいることが見いだされました。

「転換」と「転換行動を生じさせやすくする態度」についての詳細は以下の通りです。

Conversion(転換)を生じさせやすくする態度】
<好奇心>
・新しいコンテクストで学べること・身につくことが何かを探索する
新しいコンテクストだからこそ学んだり、新しく学べる領域・知識について、想定できる範囲で具体的にイメージし、仕事に対するモチベーションを維持することができる。

<コントロール>
発表ポスター
①成果のレベルと時期をコントロールする
「変化」の後に必要なスキルやメソッドが何かを特定したら、成果をどの時期にどの程度出すのかについて急ぐことなく、新しいコンテクストで自らが成果を出す時期とレベルをじっくりと見極めて行動する。想定した分野で仮にすぐには成果が出ないことがわかったとしても、「待ち」の状態が続くことに否定的なイメージを抱かない。

②転職によって、ライフとワークの関係を見直すことが、より良いストレスマネジメントにつながると認識する。
前のコンテクストと、新しいコンテクストを比較して、自らのより良い人生のために必要なワークとライフの有り様について見直すことができる。

<関心>
・他者に学び、職業アイデンティティを改訂する。
自己認識のみにとらわれず、ジョブマーケット・新しいコンテクストでの他者からの要求やフィードバックを参照して、職業アイデンティティを改訂することができる。

【転換行動】
1)コミュニケーション様式を変更することを試みる。
コミュニケーション様式はコンテクストにより異なることをあらためて認識し、新しいコンテクストで求められるコミュニケーション様式を模索しようとする。

2)奏功するビジネススキルが何かを見極め、あてはめる。
事前に想定してきたものであるかどうかに関わらず、新しい文脈において競合優位性のあるビジネススキルが何かを分析し、ビジネス場面におけるマナーから一般的なビジネススキル(プロジェクトマネジメント)や専門的なビジネススキル(マーケティング・財務分析等)など、コンテクストの変化に応じて役立つスキルのオプションを想定し、あてはめてみる力を発揮する。奏功した場合には、結果としてその成果を周囲に共有することができる。

◆実践を通じ、学び続ける
当日の発表では、若年層の職場への定着を研究している民間シンクタンクの研究者の方、国内情勢がいまだ不安定で今後の労働市場の大きな変化が想定されるウクライナの研究者の方など、キャリアチェンジがご自身のあつかう課題と直結していると感じておられる方々が興味をもってくださったようです。

われわれは今後とも「NPO法人楽伝における社会活動を通じての学び」と「伝耕における営利企業としての活動からの知見」を意識的につなげ、両者の実践経験をひきだし、ひもとき、くみたてることによって、皆さまのお役に立てる情報の発信、さらには新たなツールとノウハウづくりを手掛けてまいります。

今回取り上げたキャリアチェンジというテーマについても、「研究」という領域のみに特化した専門家ではないわれわれだからこそできる実践的研究を、今回の発表をスタート地点として続けていきたいと考えています。

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性と変化あふれる社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2016年8月18日

残暑お見舞い申し上げます

夏の切り替えに、ひとふでいかがですか

暑さは続きますが、お盆休みも終わる頃。そろそろおとなも子どもも気分を切り替えていきたい頃でしょうか。
そんなときは「ひとふでんず」の出番ですよ。前号で岩手県での「ひとふでんず」の仕事ぶりをご紹介しましたが、
今回はみなさんに直接体験いただけるよう、夏の人気シリーズ「かぶとむし」「金魚すくい」「せみ」を一気にお届けします!

小学生たちに大人気の3点ですが、お休み明けにキモチや
アタマを切り替えたいオトナのみなさんにもオススメ!
ひとふでんず」は「短い時間で楽しく集中➡達成感!」をもれなくプレゼントしてくれますので、とにかく楽(ラク)に楽しくリフレッシュできます。実のところ、休日に開催した子どもたち向けの「ひとふでんず」会の現場では、
なりで子ども以上に熱中しておられるオトナさんたち、
たいへんよくおみかけします(笑)

それでは簡単に『ひとふでんず道~初級編』をご案内します!
◆ポイント1  用意するものは?
《写す人》 写す紙、鉛筆・ペン
《そのまま見て描きたい人》 鉛筆・ペン
「本格的なトレーシングペーパーももちろんいいですが、簡単なところではA4やB5サイズで綴じたものを、文具店や100円ショップの子ども用ノートや画用紙コーナーでよくみかけますよ!」 by 楽伝スタッフ 

◆ポイント2 描きはじめのコツ
まず全体をながめて、「黒丸(スタート印)」からの行き先を考えます。もちろん、簡単なひとふでんずならいきなり描いてもOK、どこから描いてもOK。
「でもちょっと複雑なひとふでんずは、いきなり描きはじめると、絵も頭もこんがらがります(笑)」 by 楽伝スタッフ

◆ポイント3 自慢できるような仕上がりにするには?
ふだん絵を描きなれていない人は、直線と曲線がきれいに
描けなかったり、長い線を一気に描き終えたと安心して
息継ぎした瞬間に線がとぎれてしまったりして、全体の
バランスが崩れてしまいます。
「ひとふでんず」は一筆書きですので一本の線で(そのまんまですが・・・笑)描きたいですね。
何回かなぞっているうちにバランスがとれるようになり、手のどこに力をいれて描けばいいか、次にどこを見て描けばいいか、身体にしみついてきます。そのうち、だんだん細部もかっこよく描けるようになります。
「単純なものであれば、練習すれば下絵なしで描けるようにも!ひとりで描けるようになった「ひとふでんず」を人に見せると、判を押したように相手が驚いてくれて、ちょっと鼻高々な気分になります。」 by 楽伝スタッフ

◆ポイント4 慣れてきたら/飽きてきたら
鉛筆やペンで描くのに慣れたら/飽きてきたら、クレヨンでも絵の具でも、筆でも、お好きなもので、お好きな大きさで、ご自由にあれこれ楽しんでみてください。
「筆は力の加減がそのまま反映されやすくておもしろいですよ。書道半紙と絵筆の組み合わせもオススメです!」 by 楽伝スタッフ

「ひとふでんず」は単純になぞってみるだけで、絵が描けた気分になります。「ひとふでんず」をなぞるだけもよし、何回か描いて覚えるのもよし。さらにできた「ひとふでんず」に色を塗ったり、何か別の絵を書き加えたりして世界でたったひとつの作品にするのも楽しいです。

描いている時には集中力がアップ。簡単なようでいて実は、次にどちらへ進もうかと迷う分岐点では頭を使いますし、大きな「ひとふでんず」と小さな「ひとふでんず」を描くときでは身体の中で使う筋肉が違うようです。

さぁ、どうぞ「ひとふでんず」なひとときを!
今回の3点、易しいものと難しいものが混じっています。見た感じの難易度で選ぶもよし、今日の気分で選ぶもよし。朝起きての精神統一にもよし、夜のクールダウンにも!どうぞご自由にお楽しみください。よろしければあなたのひとふでんず体験の感想など、楽伝までお寄せください

【参考】
>>ひとふでんずってなに

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2016年8月10日

ひとふでんず、水防訓練の会場へ行く

岩手県一関市水防訓練にて「重機一筆書き体験」
by 岩手県建設業協会千厩支部さま

磐井川河川公園にて
7月3日(日)岩手県一関市(いちのせきし)水防訓練(主催:一関市)が、同市を流れる磐井川(いわいがわ)沿いの磐井川河川公園で実施されました。磐井川は北上川の支流にあたり、一関市を流れる大きな河川です。中流には美しい渓谷で知られる厳美渓があります。
 
流域は、古くは戦後間もない1947年(昭和22年)から2年続けて大きな台風(カスリン・カリオン)での洪水により、甚大な被害が生じた経験をもちます。
水防訓練には水防隊(市の消防団)をはじめとする関係機関や団体、市民の方々が参加し、今年度は約600人の皆さんが水防への「技術」
と「意識」を確認する場となりました。

◆ココロに残る体験を
楽伝がかねてよりご縁をいただいている岩手県建設業協会千厩(せんまや)支部さまも訓練に団体参加し、多くの市民がご家族そろって河川公園に足を運び、防災の意識をたかめていただけるよう、子どもたちのココロに残る体験プログラムを実施されました。

1つは災害の予防や万一被害が生じた場合の復旧に働く「重機の試乗」体験。
もう1つは、重機のふくざつな形を、自分の手をつかって描くことを通じて俯瞰できる「重機の一筆書き」の体験です。
「一筆書き体験」には、楽伝が提供するツールの1つで、いろいろなモノを“ひとふでで描くこと”
できるユニークなグラフィック『ひとふんず』を
活用いただきました。

◆ひとふでんず「重機シリーズ」
ひとふでんず』は季節のアイテムから人物や風景画・・・何でもデザイン可能!短くシンプルな線で出来上がるものから、「本当にこれを一筆で?」とチャレンジ精神をかきたてられる、とてもとても複雑なものまで、いろいろなデザインがあります。
今回お使いいただいている重機シリーズは、企画の目的と、対象となる子どもたちの興味や年齢をふまえてアイテムを選定し、難易度を調整してデザインされたものです。

ひとふでんずのスタート地点を表す「黒丸」に始まり、息を詰めてなぞることに集中していた子どもたちがついに終点にたどりつくと、つい先ほど動かした、大きくてふくざつなカタチの重機が、自分の描いた絵として目の前にあります。
ところで、子どもたちの手にかかると同じ重機でも、好きな色やかっこいいと思う色合い、おしゃれな色合わせなど、それぞれ思いつくままに姿が変わり、おとなは重機のファションショーでも見せてもらっているような気分です。

◆カラダ・アタマ・ココロを動かして
バックホー(油圧ショベルの一種)に
チャレンジ!
子どもたちは、見上げるような大きな重機について「よじのぼって乗りこみ、操作して動かし、自分のカラダだけではできない怪力を発揮すること」「その大きな造りを一本線でなぞり、自分の手で1枚の紙の上で把握すること」をひとときに体験します。
カラダ・アタマ・ココロがいっぱいワクワクして、子どもたちはその体験をとりこんでいたことでしょう。

つい夢中に! 気づいたら楽しい♪
そんなひとときの積み重ねが、これからの時代を生きていく子どもたちだからこそ、とても大事な意味をもつのでは?
おとなのファンも多い『ひとふでんず』ですが、もっともっと子どもたちとも出会いたいと思う楽伝です。

【ご参考】
 >>「ひとふでんず、小学校へ行く!(小学生のための『建設業ふれあい事業』)

 >> ひとふでんずってなに
 
*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

2016年7月29日

ハンドベルがお寺にやってきた!

開催報告「ハンドベルとお寺の出会い」

ふだんは交わることのないモノ・ゴト・ヒト同士が出会うと、コミュニケーションには愉快な“化学反応”が生じるもの。「つたえあえば、人生がひらく」がモットーの楽伝は、そんな《化学反応おきる場》づくりが大好きです。今回は、楽伝が本拠地をおく地域コミュニティで先日開催したイベントよりご報告します。

◆お寺さんの本堂で
日曜日の昼下がり、お寺の一角から清らかに重なり合う音色が広がってきました。指揮者に向き合う13人のみなさんが奏でるイングリッシュハンドベルのコンサートの始まりです。
 
ここは大阪市天王寺区下寺町(したでらまち)。全国でも有数の仏教寺院が集まる一角にあるお寺・心光寺さんの本堂(国の有形文化財指定)です。梅雨の晴れ間に、小さいお子さま連れのお母さま、ご夫婦やお友達同士など様々なみなさんが、ハンドベルを聴いたことがある
方もない方もおでかけくださいました。
ご本尊にもお楽しみいただけたでしょうか

企画のきっかけは、ふだんはなかなか出会う機会のない『イギリスの教会発祥のハンドベル』と『お寺』が出会ったらどうなるのだろう?―そんな楽伝のふとした好奇心でした。関西で複数のハンドベルチームを指導していらっしゃる千守敦子さん(参照1)、千守さんの率いるハンドベルチーム「カンタービレ(参照2)」のみなさん、そして、下寺町でお寺を広くみなさんに身近に感じてもらうための活動「寺活(てらかつ)」を進めておられる丈徳さんにご協力をいただき実現と相成りました。

ところで、私たち法人の名前は「楽(らく)」で始まりますが、この字の「上半分」は以前にもご紹介したとおり、持ち手をもつ「手鈴」で、鈴の左右に糸飾りがついている形をしています。ちなみに、下半分の「木」という字はその鈴を掛ける台をあらわしているとのこと(白川静「字統」より)。今回は、手鈴もつ名の楽伝が、縁あってハンド“ベル”のコンサートを開催することになりました。

演奏いただいたのは、「日本の詩情」「さんぽ(となりのトトロ)」「夢を叶えてドラえもん」「故郷」「キラキラ星」「情熱大陸のテーマ」、そしてアンコールに「トリッチ・トラッチ・ポルカ」の7曲。「キラキラ星」では、お客さまにもハンドベル奏者の一員になっていただき、お寺のご厚意でなんと《木魚(もくぎょ)》もお借りしての一大コラボレーション曲となりました。

◆コラボ、聴きたい!
事前に会場の下見として本堂に伺った際、木魚がたくさん並んでいるのを拝見するうちに「ハンドベルと木魚がコラボしたらどうなるんだろう?!」と好奇心に駆られた楽伝!
指揮をしていただく千守さんにお伝えしたところ、本番当日、ほぼアドリブ状態で木魚を加えた演奏に挑戦してくださいました。
実はとても愛らしい音ながら、宗教儀式のためのお道具としてちょっとばかり距離のある木魚が、ハンドベルが奏でる「情熱大陸」をもり立てるパーカッションのよう!
その生き生きとした音は、お客さまに想定外のお楽しみとして喜んでいただけたようですが、千守さんにもこのコラボをお楽しみいただけたようです。

アンコール終了後は・・・
アンコール終了後は、ふだんは身近で見ることのないハンドベルを手に持たせていただいたり、ハンドベルの楽譜を見せていただいたり・・・。音色の刺激に続き、見て、触れて、交流して楽しむみなさんの歓声が本堂に響きました。

教会という建てものはそもそも音が響くことを狙って造られていますが、お寺は教会ほど音が響きません。音が響かないからこそ、直接、身体に訴えかけるハンドベルの音色は教会で聴くよりもぐっと生々しく、季節柄、本堂の入り口を開き、前庭の気配を感じられる開放的な空間で演奏を聴くことができたことも組み合わさって、ハンドベルの力強さを感じられる半日になりました。

楽伝は、コミュニケーションをサポートする「ツール」や「場」を提供することで、コミュニケーションの内容と関わる人のゆたかになることをミッションとしています。「地域」や「社会教育」を切り口に、さまざまなモノ・ゴトの新しく、思いがけない魅力を、見出し、発信する取り組みを、今後も続けてまいります。

◆御礼とご報告
今回お集まりいただいたお客さまには、熊本市主催の熊本地震で被災された方へのチャリティ2種類へのサポートをお願いしました。1つは、熊本市文化会館の音楽設備の復旧にあてられる「くまもとエンタメ支援金」、もう1つは、この日の会場となった心光寺さんのタージマハールを模した本堂(国の有形文化財に指定)に敬意を表し、熊本城の復旧にあてられる「熊本城支援金」です。それぞれ6,972円と、7,203円のご厚意を頂戴し、7月4日に振り込ませていただきました。
みなさまのご厚意とご協力のほど、本当にありがとうございました。

*ご参照
1.指揮・千守敦子氏
日本ハンドベル連盟認定講師。カンタービレ、同志社大学ハンドベルクワイア、同志社国際ハンドベルクワイア等、現在8チームの指揮指導を行う。
2010年、ハンドベル世界大会出場、全国ハンドベルフェスティバル、関西ハンドベルフェスティバルに自身が指揮するチームを率いて毎年出場。所属するベルエチュードでは学校、教会、ホテル、デパートなど多方面からの依頼で、幅広く演奏活動を行っている。

2.カンタービレ    
2003年に結成した交野市・枚方市在住メンバーからなるイングリッシュハンドベルのチーム。ハンドベル曲定番のクリスマス曲やクラッシックからポップスやジャズ、ハンドベルオリジナル曲など様々なジャンルに挑戦し、2012年・2014年にはソロコンサート開催。関西ハンドベル連盟主催の関西フェスティバル出演や、幼稚園や学校、介護施設、交野市の行事、セレモニーホールなどの様々な演奏依頼により演奏を行う。

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。 

2016年5月25日

ご報告《らくでん式・英語インプロワークショップ》スタート!

カラダとココロを動かし、未知と向き合う力を養う

最終日の笑顔!
  4月某日、楽伝の黄色い家(大阪市天王寺区)2階に“わかもの”たちが集まってきました。小学校高学年から中学生の子どもたち4人と、気の若い社会人たち3人。インプロ指導者NAO(ナオ)さんを迎え 「英語インプロ(即興)・ワークショップ」のスタートです。

「インプロ(improvisation)」とは台本のない
即興演技。俳優など演技者のためのトレーニングとして長らく用いられている手法です。
「せりふ」の拠り所となる台本ナシで、各自が即興的にシーンを創っていくためには、自分がいま現在どのような状況にあるかを瞬時に考察・判断し、「話=筋を見出し」動く必要があります。未知な状況といかに向き合い対応するかが試される場です。

「インプロ」という手法に変化の時代にこその魅力を感じ、楽伝は「未知と向き合う力」を養う《らくでん式・英語インプロワークショップ》の展開をはじめました。

◆インプロ x 英語 x むかしばなし
今回は第1弾!まずは、おとなより「ずっと先=変化常套の時代」を生きていくことになる子どもたち優先の“わかもの”対象企画です。【3時間x3日間のワークショップ】でチャレンジしたのは「英語インプロ劇」です。メンバーは2チームにわかれ、自分たちで創り上げるオリジナル英語劇の「創り手」兼「パフォーマー」になります。
テーマにした作品は日本のむかしばなし「ももたろう」。ある程度の筋はありますが“与えられたセリフ”だけでなくそれぞれの配役になりきり「自分ならどう伝えたいか?」と作品をアレンジしていきます。

◆Day1「失敗を楽しむ」をめざして
英語に触れて間もないメンバーもいて、ボキャブラリーも限られ、他者が話すことをその通り理解している状態でもありません。でも、それこそ英語を母語とする子どもたちができるようになっていくプロセス!
“できるようになってから”話すんじゃあ、いつまでたっても“できる”ようにならないですよ~。
と本日の指導者・NAOさん。

Day1.まだ照れまくり(汗)

初日はとにもかくにもウォーミングアップ!
NAOさんの声がけでインプロでのゲームやワークに声を出し、カラダを動かします。
しかし、一体この3日間何をどうするのか、あえてくわしい「To Do」がない状況です。漠然とした不安満載な中、しかもお互いによく知らない相手とすでに共同作業のワークが始まっちゃった・・・もう、緊張するやら恥ずかしいやら。
 
「こういうことかなぁって思うけど自分、間違っているかも」と発話できなかったり、「やったことないし失敗するかも」と思うとカラダが動かなかったり。でもそんなレディネスない状態にお構いなくどんどんワークに巻き込まれていきます。
 
当然、上手くいかないことが、いやはやたくさんでてきました。ペアワークでカラダを動かすも「あれっ、こんなはずじゃ・・・」「またダメだ・・・」と小さな失敗、いやいや結構な失敗が続きます。
上手くいかないと、恥ずかしかったり当惑したり。しかし失敗もこれほどに回数を重ねると、だんだん少しずつ怖くなくなってくる!失敗を通じた体験で得た小さな自信が、彼女・彼を、少しずつ前に押し出しているようでした。
さて「やってみる=アウトプット」に興味がわいてきたところで、次は「ちゃんと見る&聴く」にアンテナをたてる練習です。周りの他者とコミュニケーションをはかって、自分のいる【いま、ここ】を瞬時につかむ必要のあるインプロでは、このアンテナはどちらもとても重要です。
さいごに明日から始まるグループワークに向けて、チーム分けをして初日終了!
カラダもアタマも温まって、ココロも開いてきたかな?! 
Day2.本日も
真剣にあったまり中♪

◆Day2「情報を引き出す」を知る
昨日の山ほどの失敗体験でだいぶゆるんだものの「まだまだ“間違い=ペナルティ”の思考の構造が健在!」とNAOさん。“失敗を楽しむ”までには道半ばです。とはいえ初日に比べればだいぶ自由な空気が流れています。  
しっかりウォーミングアップののち、今日はインプロでは必須のスキル―その場の状況を見極めるべく質問を投げかけ情報を得る―《質問力》をきたえます。どのような状況におかれているかを瞬時に考察・判断して「話=筋を見出し」進行するインプロでは、いかに少ない質問で自分の次の一手を決めるに役立つ情報を引き出せるかが肝心です。高い会話力=相手とコミュニケーションをはかる力が求められます。
 
さて本日のラストは、最終日の発表に向けたグループワーク。
さる?おに?ももたろう? 自分以外のキャラになることがそろそろ楽しくなってきたメンバーたちでした。

◆Day3「いま、ここ」を楽しむ
最終日ももちろん、ウォーミングアップにインプロゲームにと最初から動いていきます。日を追うごとにお互いに徐々に打ち解け、仲間への信頼があたり前のものになり、ミスも「あるある=OKの感覚に!どうでしょう、写真からもメンバーの変化を感じていただけるのでは?

Day3.熱、入りまくってます!
いよいよ発表タイムです!
「子どもたちのやっていることを見てみたい!」という保護者のみなさんを迎えて、この2日間にチャレンジしてきたあれこれを混ぜこんでの発表です。
不思議なもので、初日に“インプロ”にはシナリオもパターンもないことで緊張していたメンバーだったはずですが、いざショータイムとなりインプロに加え、「(こうしようと)予め決めたことを演じる」部分も生じると、もはやそちらの方が「(決めたとおり)上手くいくか緊張!」な様子。“インプロな”パートではむしろホッ(!)として、昨日までよりいきいきと自由な表現ができていました。

楽伝メンバー・辻野恵美子(社会教育事業担当)は振り返ります。
“この3日間で、どうしたら自分の気持ちを相手に伝えられるか 相手の気持ちを読み取れるか、たくさん考え、学んでいただきました。私自身も、インプロでもとめられる、過去に習得した既知のことにとらわれず【いま、ここ】を見ようとする態度と行動はいまの時代を生きる力になる、とあらためて感じました。
人生、つまりキャリアはつたえあえば、ひらくもの。らくでん式・英語インプロは、子どもたちだけでなく、アタマの固まりがちなおとなにもぜひ体験していただきたいプログラムです!”

ところで閉講してしばらくのちのこと。「あの日から子どもの様子が変わった・・・」とのご連絡をいただきました。これまでの「一方通行の押しきり型コミュニケーション」に「相手の間合いをみての行動」が加わったひと、何か発表するとなると「ミスを気にして、日頃の元気がどこへやら」だったのが「とにかくチャレンジする」ようになったひと・・・。いろいろとうれしい後日談でした。
 
《らくでん式・英語インプロ》は、今後も開催していきます。
“次回、子どもたちのためのワークショップは夏休みです!
 えっ、早くオトナ向けを? はい、プランいたします(笑)”by 辻野。
開催予定は決定しだい、
Facebook楽伝本ブログにてご案内していきます。

>>第2回《らくでん式・英語インプロワークショップ》はコチラ

*楽伝はコミュニケーション力とキャリアの開発を両輪ととらえ、多様性に満ち、変化の激しい現代社会において力を発揮する人材を育てることを通じて社会に貢献します。

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